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フィリピン進出にかかる費用を徹底解説 | 資本金・人件費・税制優遇まで2026年最新版

2026-06-29

ノウハウ

フィリピン進出にかかる費用を徹底解説 | 資本金・人件費・税制優遇まで2026年最新版

フィリピンへの進出を検討する際、誰もが最初に気になるのが「進出にいくらかかるのか」という点ではないでしょうか。

人件費の安さばかりが先に伝わってくる一方で、実際に動き出してみると、資本金の壁や行政手続きの遅延、専門家への報酬など、想定していなかった費用が次々と顔を出すことも少なくありません。

本記事では、進出形態ごとの資本金要件から、会社設立時にかかる行政・専門家コスト、採用にまつわる人件費の実態、拠点を構える際の賃料相場、そして2026年現在もっとも重要な税制優遇となっているCREATE MORE法の活用法まで、現地の最新情報をもとに整理しました。フィリピン進出の費用感をつかみたい方の参考になれば幸いです。

進出形態によって資本金は大きく変わる

フィリピンで事業を始める際、まず決めなければならないのが「どの形態で進出するか」です。現地法人(子会社)、外国企業の支店(ブランチ)、駐在員事務所という3つの選択肢があり、それぞれ法的に許される活動範囲と資本金要件が根本的に異なります。

国内市場向けに現地法人を設立する場合、外資比率が40%を超えると改正外国投資法(共和国法第11647号)に基づき、原則として20万米ドルの最低払込資本金が求められます。ただし、科学技術省が認定する先進技術を活用する事業や、革新的新興企業法に基づくスタートアップ認定、現地フィリピン人を15人以上直接雇用するなどの条件を満たせば、10万米ドルまで引き下げられる優遇措置も用意されています。

一方、売上の60%以上を海外向けとする輸出型企業として認定されれば、会社法上の最低資本金はわずか5,000ペソで済みます。とはいえ実務上は、銀行口座の開設や法人登記をスムーズに進める観点から、20万〜100万ペソ程度を準備しておくのが一般的とされています。輸出型企業の支店については、最低資本金や運転資金の要件自体が対象外となる特例もあります。

情報収集や本社との連絡業務に特化した駐在員事務所であれば、現地での営業活動や売上発生が一切認められない代わりに資本金規制も存在しません。ただし、親会社から年間3万米ドル以上の運営資金を送金する義務が課される点には注意が必要です。

なお、外食業を含む小売業へ進出する場合は、改正小売業自由化法(RA 11595)により最低払込資本金2,500万ペソ以上、店舗展開を行う場合は1店舗あたり1,000万ペソ以上という、まったく別次元の資本要件が課されます。

自社が「国内市場向けか輸出型か」「営業活動を行うか調査拠点で十分か」を最初に整理することが、資本金の見積もりを大きく左右します。下表のように、進出形態によって資本金要件は大きく異なります。

フィリピンにおける進出形態別の資本金要件を比較した表。国内市場向け現地法人、輸出型企業、駐在員事務所、外資100%の小売・外食業における最低資本金や営業活動の可否が記載されている。

設立手続きにかかる行政費用と専門家報酬

法人を設立する際には、証券取引委員会(SEC)への登記を起点に、バランガイクリアランス、市長許可証、内国歳入庁(BIR)での納税者番号取得や公式領収書の印刷許可まで、複数の行政手続きを順番に進める必要があります。

純粋な官庁手数料だけであれば3万4,000〜9万9,000ペソ程度に収まりますが、現地の言語や行政慣習に不慣れな日系企業の多くは、現地のエージェントや日系・ローカルの専門コンサルティング会社に手続きを委託しています。

SEC登記の代行のみであれば2万〜10万ペソ程度で済みますが、フィリピン経済区庁(PEZA)や投資委員会(BOI)への投資優遇申請までまとめて依頼する場合は、10万〜30万ペソの基本報酬が発生し、これに書類の翻訳・認証費用として5万〜15万円程度が上乗せされます。

見落とされがちなのが、現地で発生する専門家への報酬に課される10%の源泉徴収税です。会計・税務面でのキャッシュフロー管理を考える際は、この源泉税分も織り込んでおく必要があります。

また、設立後は法定の会計帳簿作成や毎年の法定監査(CPA監査証明の取得)がSECおよびBIRから義務付けられており、月々の会計顧問費用は2万〜3万ペソ、経理業務を全面的に外部委託する場合は5万〜8万ペソ、年次決算・監査については8万〜15万ペソ程度を見込んでおくとよいでしょう。

費用の話とあわせて押さえておきたいのが、設立完了までにかかる期間です。SEC登記自体は書類が揃っていれば数週間で完了するケースもありますが、バランガイクリアランスや市長許可証の取得、BIRでの登録、銀行口座開設まで含めると、トータルで3〜6カ月程度を要するのが実情です。

飲食業や小売業のように業種特有の許認可が絡む場合は、さらに先を見据えた資金計画が必要になります。この期間中もオフィスの賃料や駐在員の人件費は発生し続けるため、設立コストの見積もりには「待機期間中の固定費」も必ず含めておくべきです。

フィリピンでの設立関連費用の相場レンジをまとめた表。官庁手数料一式、SEC登記代行、PEZA/BOI申請込み代行、年次決算・法定監査の項目ごとに費用の目安(ペソ表記)が示されている。

人件費は「最低賃金」だけで考えると見誤る

フィリピン進出の魅力としてよく語られるのが人件費の安さですが、ここに落とし穴があります。2025年7月18日に発効したマニラ首都圏の最低賃金は日額695ペソまで上昇しており、これは月額に換算すると1万5,000ペソ程度にすぎません。

しかし、実際にホワイトカラー人材を採用する場面では、この法定最低賃金がほとんど意味を持たなくなります。フィリピン統計庁が2025年11月に公表した職業別賃金調査によれば、フルタイム労働者の平均月額賃金は2万1,544ペソに達しており、現地大卒の新卒採用であれば2万5,000ペソ程度が一般的な相場とされています。
中堅の事務スタッフやITエンジニアを確保するには、さらに上乗せが必要になるのが実情です。

これに加えて、すべての雇用主に義務付けられている「13ヶ月給与」(基本給1ヶ月分に相当する年末ボーナス)、社会保障制度(SSS)の雇用主負担9.5%、医療保険(PhilHealth)の雇用主負担2.5%などの法定福利厚生費を合算すると、基本給の1.3〜1.4倍程度を実質的な人件費として見積もるのが現実的です。

日本人駐在員を配置する場合には、就労ビザ(9Gビザ)の初回申請費や外国人雇用許可(AEP)の発給手数料なども必要になり、専属弁護士を介して一連の手続きを代行すると1名あたり年間7万ペソ程度のパッケージ費用が発生します。

フィリピンにおける人件費の目安をまとめた表。マニラ首都圏最低賃金(日額)、フルタイム労働者平均賃金(月額)、大卒エントリークラス初任給(月額)、法定福利厚生費(雇用主負担比率)が記載されている。

拠点コストは立地によって大きく変わる

物理的な拠点を構える場合は、エリアごとの賃料相場の把握も欠かせません。マニラ首都圏ではボニファシオ・グローバル・シティ(BGC、タギッグ市)とマカティ市の2大ビジネス街に人気が集中しており、ハイグレードオフィスの賃料はBGCで平米あたり月額1,249ペソ、マカティで1,235ペソと、フィリピン国内でも群を抜いて高い水準にあります。

一方、パラニャーケ市(1,050ペソ)やパサイ市(1,025ペソ)、マンダルーヨン市(908ペソ)であれば、アクセス面で多少の不便を受け入れる代わりに、賃料を1〜2割ほど抑えることが可能です。

駐在員用のコンドミニアムについても同様の傾向があり、BGCの1ベッドルームは月額4万〜6万5,000ペソ、マカティは3万〜5万ペソとやや割安です。

なお2025年後半に投資家リース法が改正され、外資企業による土地のリース期間が従来の最長75年間から99年間へと延長されたことで、工場や自社ビルなど大規模拠点を構える製造業やロジスティクス企業にとっては、長期的な投資リスクが大きく下がっています。

フィリピンの主要ビジネスエリア別(BGC、マカティ市、パラニャーケ市、パサイ市、マンダルヨン市)のオフィス賃料(1平方メートルあたりの月額ペソ)を比較した表。

CREATE MORE法による税制優遇を使いこなす

これらのコストを相殺する最大の鍵となるのが、2024年11月に発効した「CREATE MORE法(企業復興税優遇法改正、共和国法第12066号)」です。追加控除制度(EDR)を選択した登録法人については、法人所得税率が通常の25%から20%に引き下げられ、登録事業にかかる電力費用については100%の追加控除、つまり実質的に支出額の2倍を損金算入できる仕組みが導入されました。

さらに、投資優遇措置の適用期間も従来の最大17年間から最大27年間へと大幅に延長されています。PEZAやBOIへの登録を前提に事業計画を組むことで、研修費用や国内資材調達費にも追加控除が適用され、長期的なコスト構造を大きく改善することが可能です。

実際、2025年のPEZA投資認可額は前年比21.9%増の2,608億9,000万ペソに達し、年間目標であった2,500億ペソを大きく超えました。BOIの投資認可額も1兆5,600億ペソと、過去2番目の高水準を記録しています。

CREATE MORE法(改正税法)による主な優遇措置をまとめた表。法人所得税率の引き下げ、電気代の追加控除、投資優遇措置の適用期間延長、国内調達費用の追加控除などの改正内容が記載されている。

モデルケースで見る進出費用の全体像

ここまで紹介した4つのコスト要素(資本金、設立関連費用、人件費、拠点費用)を、実際に小規模なコンサルティング・トレーディング会社がマニラ首都圏に現地法人を設立するケースに当てはめてみましょう。

輸出型企業として認定されず国内市場向けに事業を行う想定であれば、最低でも資本金として20万米ドル前後の準備が必要になります。
これに加えて、SEC登記からPEZA申請まで現地コンサルティング会社に一括委託する場合は設立関連費用として20万〜30万ペソ程度、現地スタッフを数名採用するなら一人あたり月給2万5,000ペソ前後に法定福利厚生費を加えた人件費、そしてマカティやBGC以外のエリアでオフィスを構えれば月額賃料は数万ペソ程度に収まります。

これらを単純に合算するだけでも、初年度の総コストは資本金部分を除いても数百万円規模に達することがわかります。

逆に言えば、資本金をどの形態でどれだけ準備するかという最初の判断こそが、トータルコストの大半を決定づけるということです。表2・表3で示した設立関連費用や人件費の内訳と合わせて、自社の事業計画に当てはめながら検討してみてください。

まとめ — 予算設計は3つの視点で

フィリピン進出の費用を考える際は、人件費を法定最低賃金だけで楽観視しないこと、設立から商業運転開始までの行政手続きの遅延を見込んで十分な運転資金を確保すること、そしてCREATE MORE法の優遇措置を自社の事業計画にどう組み込むかを検証すること、という3つの視点を併せて予算を組むことが欠かせません。

フィリピン中央銀行の統計によれば、2025年の外国直接投資(FDI)純流入額は前年比17.1%減少していますが、これはインフレや高金利という短期的なマクロ要因による影響が大きく、BOI・PEZAともに投資認可額自体は高水準を維持しています。

中長期的な成長ポテンシャルを見据えた進出計画であれば、いまの優遇制度を活用する好機ともいえるでしょう。

フィリピン進出に関するご相談はAXIA Promotion & Trading Philippines Corporationへ

資本金の設定から人件費シミュレーション、CREATE MORE法による優遇適用の可否診断、進出形態の選定や現地パートナーとの交渉まで、専門的な知見が必要な場面は多岐にわたります。

フィリピン進出にかかる費用の見積もりについては、ぜひAXIA Promotion & Trading Philippines Corporationまでお気軽にお問い合わせください。


出展

ジェトロ「外資に関する規制|フィリピン」 https://www.jetro.go.jp/world/asia/ph/invest_02.html

Digima〜出島〜「フィリピンでの会社設立ガイド」 https://www.digima-japan.com/knowhow/philippines/expert-camellia-consulting-inc-00002.php

3D ACADEMY「フィリピンで起業するにはいくらかかる?」 https://3d-universal.com/blogs/2025/06/how-much-does-it-cost-to-start-a-business-in-the-philippines.html

辻国際税務会計事務所「業務報酬」 http://tsuji-associates.com/?page_id=89

Trading Economics「フィリピンの日々の最低賃金」 https://jp.tradingeconomics.com/philippines/minimum-wages

ジェトロ「フルタイム時間給労働者の平均月額賃金」 https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/12/f78dd9f416a5eb62.html

3D ACADEMY「SSS, Philhealth, Pag-Ibigについての基礎知識」 https://3d-universal.com/blogs/2025/06/sss-philhealth-pag-ibig.html

ジェトロ「マニラ首都圏のオフィス賃料」 https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/08/d750fa55858d87f9.html

Bed and Go「BGCとマカティの家賃比較」 https://www.bedandgoinc.com/post/bgc%E3%81%A8%E3%83%9E%E3%82%AB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%81%AE%E5%AE%B6%E8%B3%83%E6%AF%94%E8%BC%83

One Asia Lawyers「投資家リース法改正」 https://oneasia.legal/15660

PwC Japan「フィリピンの税務環境とCREATE MORE施行」 https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/prmagazine/pwcs-view/202502/54-05.html

ジェトロ「PEZAの2025年投資認可額」 https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/01/c0cc54737c5fe320.html

ジェトロ「2025年のFDI純流入額」 https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/03/f358e5b03252b254.html

執筆者

金田 大樹

鉄鋼専門商社や株式会社ネオキャリアのフィリピン現地法人での勤務を経て、リサーチ事業にて起業。中堅~大手の調査会社やコンサルティング会社のリサーチのプロジェクト管理を行った。その後、AXIA Marketing(アクシアマーケティング)株式会社を設立し、代表取締役に就任。フィリピン市場の成長を受けて、「AXIA Promotion & Trading Philippines Corporation」を立ち上げ。上場企業をはじめ、多くの企業の成長を「価値ある情報提供力」でサポートしている。

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