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フィリピン進出の失敗・撤退の実態とは|原因とリスク回避のポイントを徹底解説 

2026-06-29

ノウハウ

フィリピン進出の失敗・撤退の実態とは|原因とリスク回避のポイントを徹底解説 

フィリピンは日系企業の進出先として注目度を高めていますが、その裏側で『フィリピン進出の失敗』や『撤退』を選択する企業も後を絶ちません。

2025年の対フィリピン外国直接投資(FDI)純流入額は前年比17.1%減と過去5年で最低水準まで落ち込み、ジェトロの調査でも人材確保の悪化を指摘する日系企業が増えています。

一方で、進出企業の営業利益黒字割合はフィリピンがASEANで最も高い75.3%に達しており、『市場としての魅力』と『進出後に直面する現実的なリスク』が表裏一体になっているのが、この市場の特徴です。

本記事では、フィリピン進出が失敗に至る典型パターンと、撤退実務で実際に立ちはだかる法務・税務上のハードルを、公的機関のデータと実例に基づいて整理します。」

フィリピン進出の現状――統計が示す「停滞」と「期待」のねじれ

フィリピン中央銀行(BSP)の発表によると、2025年の外国直接投資(FDI)純流入額は77億9,100万ドルとなり、前年比17.1%減と過去5年間で最低水準に落ち込みました。一方で、フィリピン経済特区庁(PEZA)による2025年の投資認可額は2,608億9,000万ペソと、前年比21.9%増という対照的な結果も出ています。

この食い違いは、FDI減少の主因が親子会社間の貸付(企業間債務投資)の縮小にあり、新規の出資そのものが減ったわけではないことを示しています。つまり「フィリピンへの関心が薄れた」というより、世界的な金利環境や地政学リスクを背景に、資金の出し方が変わったと見るのが実態に近いといえます。

ただし、現地の景気そのものは楽観できません。2025年の実質GDP成長率は4.4%にとどまり、政府目標の5.5~6.5%を下回りました。建設関連の予算配分問題や政治不信が投資の足を引いたほか、2026年に入ってからは中東情勢の緊迫化に伴う燃料高とペソ安が重なり、2026年4月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比7.2%まで上昇しています。

フィリピン進出を検討する際は、こうしたマクロ環境の変化を前提に計画を立てる必要があります。

フィリピン進出が失敗する理由――競合の誤認と労務トラブル

ジェトロの調査では、フィリピン進出企業の営業利益黒字割合は75.3%とASEANで最も高い水準にあります(前年比5.5ポイント増)。堅調な個人消費を背景とした現地販売の拡大が業績を押し上げている一方で、競合構造の誤認は依然として失敗要因になっています。

ASEAN主要6カ国の製造業を対象にした調査では、「中国企業」を最大の競合と回答した割合が33.3%に達し、地場企業や日系企業を上回りました。

フィリピンの製造業に限っても31.3%の企業が中国企業を最大の競合と回答しており、原材料・エネルギーコストの上昇を価格に転嫁しにくい状況の中、価格競争の激しさが利益を圧迫する要因になっています。

一方、ASEAN主要6カ国の非製造業全体で見ると、最大の競合は中国企業ではなく地場企業(回答割合36.2%)であり、中国企業は18.6%にとどまります。現地の生活習慣や購買行動を深く理解した地場ブランドに対し、「日本での成功パターン」をそのまま持ち込む戦略では太刀打ちできないケースが少なくありません。

もう一つの典型的な失敗要因は、現地従業員との労務トラブルです。フィリピン労働法は憲法上の「労働者保護」を基本理念としており、解雇には厳格な手続きが求められます。客観的な能力不足や規律違反があっても、次の手順を欠くと違法解雇とみなされます。

フィリピンにおける正当な理由による解雇手続きを図解したフローチャート。弁明機会の付与(Show Cause Notice)、客観的な審査、書面による最終解雇通知(Notice of Termination)の3ステップの手順を示している。

また試用期間は最長6ヶ月で、1日でも超過して勤務させると本人の同意にかかわらず正規雇用に切り替わります。会社都合(人員削減等)による解雇では、勤続年数×0.5〜1.0ヶ月分の給与を下回る解雇手当の合意は判例上無効とされ、後から差額の支払いを命じられるリスクもあります。

実際に、大手商社が手がけていたフィリピンのバナナ生産事業では、現地労働組合との労働条件をめぐる対立が長期化し、国内外の人権団体からの指摘も重なったことで、2019年に合弁株式の全売却という形での事業終了に至りました。

労務管理の軽視は、ブランド全体の評価に直結するリスクであることがわかります。

フィリピン進出後の人材確保リスク――賃金上昇と採用難が経営を直撃する

フィリピン進出企業にとって、競合対策と並んで深刻なのが人材確保の問題です。ジェトロの調査では、フィリピンで直近2年間に人材確保の状況が「悪化(採用が困難になっている)」と回答した企業は38.7%に達しました(ASEAN主要6カ国平均は36.2%、最も高いのはベトナムの48.2%)。

悪化理由として最も多く挙げられているのは、職種を問わず賃金・待遇に対する要求水準の急速な高まりです。

フィリピン進出後の人材確保リスクと賃金上昇の現状を示す表。スタッフ・ワーカー層、専門職(エンジニア等)、管理職のカテゴリー別に、採用環境の悪化を指摘している企業の割合をまとめている。

現場作業者の確保に加え、技術者や管理職まで幅広い層で採用難が進んでいるのはASEAN全域に共通する傾向です。

フィリピンに限ってみると、人材獲得競争の相手企業は地場企業(45.8%)が最多で、米国系(25.0%)や欧州系(22.0%)企業との競合も目立ち、中国系企業(17.3%)との競合は相対的に低いという、製造業の価格競争とは異なる構図が見られます。

採用コストや賃金水準を「数年前の感覚」のまま予算化してしまうと、進出後数年で人件費が想定を大きく上回り、収益計画そのものが崩れてしまいます。進出計画の段階から、職種別の採用難易度と賃金トレンドを織り込んだ人員計画を立てることが、失敗を避ける上で欠かせません。

CREATE MORE法による制度改善――フィリピン進出の判断軸はどう変わったか

外資規制そのものは依然として残っています。国内市場向け企業を設立する場合、原則として20万米ドル以上の最低払込資本金が必要であり、土地所有の禁止など外国人投資を制限する「ネガティブリスト」も存在します。

こうした規制の影響を緩和する目的で、2024年11月28日に「CREATE MORE法(共和国法第12066号)」が施行されました。登録事業者の法人税率は20%まで引き下げられ、優遇措置の適用期間も最長27年まで延長されています。

研究開発費やフィリピン人材の教育訓練費については100%の追加控除が新設され、人事・法務・会計といった管理サポート費用についてもVATゼロレートの対象として明示されました。制度面では、以前より腰を据えた投資判断ができる環境が整ってきています。

フィリピンからの撤退の現実――なぜ2〜4年もかかるのか

フィリピンからの撤退は、アジア・オセアニア地域の中でも実務が煩雑で長期化しやすいプロセスとして知られています。完了までに2〜4年を要するのが一般的です。

フィリピンからの事業撤退・会社清算の手順を図解したフローチャート。税務監査(BIR)によるタックスクリアランス取得が最大の障壁となり、撤退完了までに2〜4年の長期間を要する現実を説明している。

このプロセスの中で最も時間を要するのが、内国歳入庁(BIR)による税務監査とタックスクリアランスの取得です。BIRは原則として過去3年分の帳簿や領収書の整合性を監査するため、過去の記帳に不備があると審査が著しく長期化します。

また、実務上よくある失敗として、清算手続きの途中で法人口座を早期に閉鎖してしまい、追加納税や専門家への支払いに対応できず手続き自体が停滞するケースも報告されています。

フィリピン進出のリスクと機会は業種によって異なる

フィリピン市場の特性は業種ごとに大きく異なるため、一律に「フィリピンは難しい」「フィリピンは伸びる」と捉えるのは危険です。

IT-BPM・ICT分野はフィリピン経済の最大の成長エンジンであり、データ分析やAI活用を伴う高度なナレッジ・プロセス・アウトソーシングへの移行が進んでいます。ジェトロの調査では、デジタル技術への投資・活用を拡大する日系企業の割合がASEAN主要国の中でも高い水準にあることが確認されています。

自動車・製造業では新車販売が拡大している一方、中国メーカーの台頭により価格競争が激化しており、現地生産・電動化への対応を急ぐ動きが見られます。

飲食・小売・サービス分野は内需と人口ボーナスに支えられ黒字率を牽引する主役ですが、最低資本金規制や商慣習の違いから、単独進出よりも現地大手グループとの合弁・フランチャイズ提携を選ぶ企業が増えています。

自社の業種がどのカテゴリーに当たるのかを見極め、それぞれの競合構造に合わせた戦略を立てることが、進出の成否を分けます。

フィリピン撤退・会社清算に至る法的トリガーも知っておく

撤退は自社の経営判断だけで起こるわけではありません。フィリピンの会社法では、設立登記後5年以内に事業を開始しない場合や、休眠状態が一定期間続いた場合など、証券取引委員会(SEC)が強制的に解散を命じる事由も定められています。

意図せずこうした事由に該当しないよう、現地法人の事業実態を定期的に確認しておくことも、撤退リスクの管理の一部といえます。

フィリピン進出の失敗を避けた企業に共通する考え方

すべての日系企業が苦戦しているわけではありません。讃岐うどん専門店「丸亀製麺」を展開するトリドールホールディングスは、2017年8月のマニラ1号店出店以来、現地大手コングロマリットSuyen Corporationの子会社「B.V. CUISINE INC.」をローカルバディとして選び、2024年7月には50店舗目を出店しています。

不動産確保や行政手続きといった、日系企業が最も苦労する領域をローカルパートナーの知見に委ねたことが、急成長の土台になりました。

不動産、労務、行政手続きという「地場の不条理なルール」に単独で立ち向かうのではなく、現地の力のあるパートナーとどのような価値を共有できるかを早い段階で具体化すること。それが、進出失敗のリスクを最小化する現実的な一歩だといえます。

まとめ――フィリピン進出の失敗・撤退を避けるための3つの視点

ここまでの内容を踏まえると、フィリピン進出で失敗・撤退に至らないために押さえておきたい視点は大きく三つに整理できます。

第一に、進出計画の段階から「撤退シナリオ」を想定し、帳簿や税務処理の透明性を操業初日から維持しておくことです。BIRのタックスクリアランス取得に2〜3年かかる現実を踏まえれば、有事の際の対応コストを最小化する備えは早いほど効果があります。

第二に、CREATE MORE法が用意した研究開発費や人材育成費の追加控除を活用し、安価な労働力への依存から早期に脱却することです。人材確保の悪化が続く中、労働集約型モデルのまま規模を拡大する戦略は長期的に行き詰まりやすくなります。

第三に、不動産確保や行政手続き、労務管理といった「地場の不条理なルール」に単独で立ち向かうのではなく、現地で実績のあるパートナーとの提携を早い段階で具体化することです。

フィリピン進出に関するご相談はAXIA Promotion & Trading Philippines Corporationへ

フィリピン進出の成否は、マクロ統計や制度改正の知識だけでは測れません。
現地の労務慣習やパートナー選定、撤退まで見据えた計画設計まで含めて、実務に即した判断が求められます。

「フィリピン 進出」を成功させるためには、進出のメリットだけでなく、失敗や撤退の実例から学べるリスクを早い段階で織り込んでおくことが重要です。

AXIA Promotion & Trading Philippines Corporationでは、日本企業のフィリピン市場進出を、現地ネットワークと実務知見の両面からサポートしています。

市場調査や事業計画の策定段階から、法人設立後の労務管理、そして万が一の撤退判断に至るまで、フィリピン進出に関するご相談はお気軽にAXIA Promotion & Trading Philippines Corporationへお問い合わせください。

出展

ジェトロ「2025年のFDI純流入額は約78億ドル、過去5年で最低水準(フィリピン)」 https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/03/f358e5b03252b254.html

ジェトロ「PEZAの2025年投資認可額は約2609億ペソ、前年比21.9%増(フィリピン)」 https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/01/7258f42ac0a0696b.html

ジェトロ「2025年GDP成長率は4.4%、洪水対策予算問題で建設業の成長にブレーキ(フィリピン)」 https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/03/06d82bade6e77f0e.html

ジェトロ「2025年度海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」 https://www.jetro.go.jp/world/reports/2025/01/231fa237934b5b0c.html

ジェトロ「企業復興税優遇法の改正法(CREATE MORE法)が成立(フィリピン)」 https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/11/4df8f3cce0ac5025.html

PwC Japan「フィリピンの税務環境とCREATE MORE施行による期待」 https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/prmagazine/pwcs-view/202502/54-05.html

モノリス法律事務所「フィリピンの労働法を弁護士が解説」 https://monolith.law/corporate/philippines-labor-law

ゲルベラ・パートナーズ「フィリピンの労務のポイント その2」 https://gerbera.co.jp/blog/p03/b15/theme-3562/

東洋経済オンライン「住商が「フィリピンバナナ」から撤退したわけ」 https://toyokeizai.net/articles/-/290826

日本経済新聞「住商 フィリピンのバナナ生産から撤退 株式売却へ」 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46267980Y9A610C1TJ1000/

東京コンサルティンググループ「フィリピンにおける会社撤退・SEC手続き実務」 https://kuno-cpa.co.jp/philippines_blog/philippines-production-withdrawal-sec-procedure/

マーキュリー・ジェネラル法律事務所「フィリピンにおける解散・清算について」 https://www.mercury-law.com/philippines-tettai

トリドールホールディングス プレスリリース「『Marugame Udon』フィリピン50店舗達成」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000189.000028440.html

流通ニュース「トリドールHD/『丸亀製麺』フィリピン50店舗達成」 https://www.ryutsuu.biz/abroad/q072574.html

執筆者

金田 大樹

鉄鋼専門商社や株式会社ネオキャリアのフィリピン現地法人での勤務を経て、リサーチ事業にて起業。中堅~大手の調査会社やコンサルティング会社のリサーチのプロジェクト管理を行った。その後、AXIA Marketing(アクシアマーケティング)株式会社を設立し、代表取締役に就任。フィリピン市場の成長を受けて、「AXIA Promotion & Trading Philippines Corporation」を立ち上げ。上場企業をはじめ、多くの企業の成長を「価値ある情報提供力」でサポートしている。

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