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フィリピン進出企業の事例で読み解く業種別動向|日系企業リストとPEZA活用の境目 

2026-06-29

ノウハウ

フィリピン進出企業の事例で読み解く業種別動向|日系企業リストとPEZA活用の境目 

トヨタ自動車のフィリピン現地法人は、1994年に新車販売台数・乗用車・商用車の3部門で年間トップに立つ「トリプルクラウン」を初めて獲得して以来、2024年実績で23回連続の受賞となりました(2024年の販売台数は218,019台で過去最高)。

一方で、同じ国に拠点を構えた企業の中には、マネージャー層の離職に悩み、駐在員の体制を見直さざるを得なくなったケースも少なくありません。

「フィリピン進出企業」という言葉で検索される情報の多くは、進出企業数や制度の説明に終始しがちだが、実際に成果を出している企業の動き方を見ると、業種ごとに明暗の分かれ方がかなり違います。

本稿では、製造業・BPO・小売の3業種を軸に、公的データと企業の公表事例から、フィリピン進出企業の実像を整理します。

フィリピン進出企業の事例【製造業】拠点を畳まないセイコーエプソンとトヨタ

バタンガス州リパ市の工業団地に、セイコーエプソンの現地製造子会社「Epson Precision Philippines」があります。プリンターとプロジェクターの生産拠点として約20年間操業してきた同社は、2016年の日経ビジネスの取材時点では、約123億円を投じて工場の敷地面積を倍増する計画を進めていると報じられていました。

また、日経ビジネスの取材に応じた現地法人の社長は、長らく空き地だった近隣の工業団地が次々と埋まり始めたと、進出当初との変化を語っている。従業員数も約1万2,500人から2万人規模への増員を計画しているといいます。

自動車分野ではトヨタ自動車が、ラグナ州サンタロサに自社工場(Toyota Special Economic Zone)を構えている。フィリピンにおけるトヨタブランドの歴史は1962年、デルタ・モーター社(DMC)がトヨタ車の組立・販売権を取得したことに始まります。

DMCの経営破綻後、1988年にトヨタ・三井物産・GTキャピタルの合弁で現在のToyota Motor Philippines Corporation(TMP)が新たに設立され、1997年のサンタロサ工場稼働を経て、トリプルクラウンを23回連続で獲得するまでの実績を積み重ねてきました。

ホンダ、パナソニック、東芝、古河電工なども同じラグナ州周辺に製造拠点を構え、輸出加工型のサプライチェーンを形成しているとされます。

これらの企業に共通するのは、人件費の安さだけを理由に進出したのではなく、PEZA経済特区のインフラと、長年にわたる現地サプライヤー網を前提に拠点を増設し続けている点です。

フィリピン進出企業の事例【BPO】トランスコスモスがパナソニック・フィリピンの応答率を99%に上げた経緯

フィリピン進出の中でも数字で成果が見えやすいのがBPO業界である。トランスコスモスは2013年12月にtranscosmos Asia Philippines, Inc.を設立し、翌年9月から営業を開始した。開所式典には当時のPEZA長官リリア・デ・リマ氏が出席し、フィリピン政府としても歓迎する姿勢を示した進出でした。

同社が手がけた案件の一つが、フィリピンで51年の事業歴を持つPanasonic Manufacturing Philippines Corporationのコールセンター運用です。

当初は「応答までに時間がかかる」「対応品質にムラがある」という課題を抱えていたが、トランスコスモスが現状調査を行い、オペレーターの対応力向上と運用体制の見直しに着手しました。

その結果、業務開始から3年で30秒以内の応答率99%、放棄呼率0.6%という水準まで改善している。月100〜200件規模の顧客満足度調査も継続的に実施し、改善のサイクルを止めない体制を構築した点が、単なる「コストの安いコールセンター」という位置づけから一歩進んだ事例といえるでしょう。

フィリピン進出企業の事例【小売・外食】「高級ブランド」として売れているユニクロの計算

マカティのグロリエッタ5に、東南アジアで最大規模のユニクロ旗艦店があります。ファーストリテイリングは2012年にマニラへ1号店を出店し、現地価格は日本に比べて割高に設定されているにもかかわらず、都市部の中間層を中心に支持を広げてきました。

値段の高さがむしろ「日本製品としての信頼性」の証になっている点は、人件費の安さを前提に進出する製造業やBPOとは異なる、消費市場側の論理です。

コンビニエンスストア業態ではファミリーマートが2013年に出店して以降、マカティ市内を中心に店舗網を拡大した(2014年時点の報道では約40店舗規模だが、現在の店舗数は要確認)。外食では居酒屋業態やラーメン業態の出店も相次ぎ、マニラの日本食店が集積する地区は「リトル東京」と呼ばれるまでになっています。

業種別・フィリピン進出企業リスト(公式サイトURL)

本稿で取り上げた企業と、関連する公的機関の公式サイトをまとめた。事業内容や拠点の詳細を調べる際の起点として使ってください。

業種別・フィリピン進出企業リストの1枚目。製造業(セイコーエプソン、トヨタ自動車、パナソニック)とBPO・エンジニアリング(トランスコスモス、富士通)について、それぞれの主な進出エリアと公式サイトのURLをまとめた表。

業種別・フィリピン進出企業リストの2枚目。小売・外食企業(ファーストリテイリング)の進出情報と、進出支援に関わる公的機関(フィリピン経済特区庁/PEZA、日本貿易振興機構/JETROフィリピン事務所)の役割および公式サイトURLをまとめた表。

フィリピン進出企業が必ず通る6つの分岐点

業種は違っても、上記の企業が進出から拠点拡大までにたどった経路には共通の骨格がある。図にすると次のような流れになります。

フィリピン進出企業が必ず通る「6つの分岐点」をSTEP 1からSTEP 6まで時系列で解説したフローチャート。市場調査、進出形態とエリアの選定(マニラ、ラグナ・カビテ・バタンガス、セブ・クラークなど)、PEZA・BOIへの登録検討、現地パートナー・人材の確保、運用の調整と定着率の管理、増設・拠点拡大までの各プロセスが図解されている。

分岐点として効くのはSTEP3とSTEP4です。PEZA登録は事業内容や雇用規模などの条件を満たす必要があり、登録できるかどうかで投資回収のスピードが大きく変わる。STEP4の現地化がうまくいかないと、STEP5以降のどこかで定着率の低下や品質のばらつきという形で問題が表面化しやすいです。

黒字経営の裏にある人件費上昇という影

JETROの調査では、2024年の日系企業の営業利益見込みについて、黒字割合は製造業で67.9%、非製造業で64.0%となっており、ASEAN域内でも回復傾向が続いています。

投資環境のメリットとして最も多く挙げられたのは「言語・コミュニケーション上の障害の少なさ」で、製造業の作業員の基本給は月額平均273ドル、エンジニアは436ドルと、中国・マレーシア・タイ・インドネシア・ベトナムと比べても競争力のある水準にあります。

ただし、この優位性は固定されたものではありません。日系製造業のベースアップ率は2024年で5.0%に達し、特にマネージャークラスでは欧米系・韓国系企業との人材獲得競争が激しくなっています。電力コストの高さや、許認可取得に予想以上の時間がかかるケースも複数の進出企業から報告されています。

広告業は外国投資ネガティブリストにより外資比率が30%までに制限されています。小売業は2021年の小売自由化法改正により出資比率の規制自体は撤廃され、現在は払込資本金250万米ドル以上(高級品取扱業態は25万米ドル以上)を満たせば100%外資での参入が可能になっています。

まとめ:フィリピン進出企業の事例が示す、次の一歩

セイコーエプソンの増設、トヨタのトリプルクラウン、トランスコスモスの応答率99%という数字は、いずれも「進出した」で終わらず「運用し続けた」結果として積み上げられたものです。

フィリピン進出企業の事例を業種別に見ていくと、人件費の安さや英語力といった初期メリットだけで成果が出ているわけではなく、PEZAなどの制度を正しく使い、現地マネジメント層を育てながら数字で改善を追い続けた企業が、結果的に拠点を増設・拡大できています。

逆に言えば、これらのプロセスのどこかを省略すると、黒字基調のフィリピン市場であっても苦戦するリスクは十分です。

フィリピン進出についてはAXIA Promotion & Trading Philippines Corporationへお問い合わせください

セイコーエプソンやトヨタ、トランスコスモスのように、フィリピンで成果を積み重ねている企業に共通するのは、「進出して終わり」にせず、現地の実需を確かめながら事業を前に進めてきた点です。

これから進出を検討する企業にとって難しいのは、まさにこの「最初の一歩」をどう確実に踏み出すかという部分ではないでしょうか。

AXIA Promotion & Trading Philippines Corporationは、市場調査や現地視察といった0→1の立ち上げ支援から、サンプリングやテストマーケティング、営業代行による1→10の販路拡大、さらに販売代理店やEC/SNS運用による10→100の収益基盤づくりまで、フィリピン市場での実行を現地から一貫して支援しています。

2026年にはマニラ・マカティで日本食ブランドを集めた「AXIA JAPAN EXPO」を開催し、亀田製菓や小岩井乳業など複数の企業の現地サンプリング・市場調査を実行に移してきました。

「調査はしたが、その先の実行に進めない」「現地の反応を確かめてから本格展開したい」という場合は、AXIA Promotion & Trading Philippines Corporationへのご相談ください。

出展

日経ビジネス「『やばい国』汚名返上、フィリピンの実力」:https://business.nikkei.com/atcl/report/15/278202/031100029/

Wikipedia「Toyota Motor Philippines」:https://en.wikipedia.org/wiki/Toyota_Motor_Philippines

Manila Bulletin「Toyota Motor Philippines sold 218,019 vehicles in 2024」:https://mb.com.ph/2025/2/5/toyota-motor-philippines-sold-218-019-vehicles-in-2024

トランスコスモス「パナソニック・フィリピン導入事例」:https://www.trans-cosmos.co.jp/customercase/customer/panasonic-philippines.html

コールセンタージャパン・ドットコム「トランスコスモス、オペレーションセンターをフィリピンに設立」:https://callcenter-japan.com/news_topics/1364.html

UNIQLO Philippines 公式サイト:https://www.uniqlo.com/ph/en/

ジェトロ「フィリピンの投資環境(1)製造業、『豊富な人材』に強み」:https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2025/e90fdad5b63f0db3.html

ジェトロ「2024年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」:https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/2737fbd089afdb85/20240024rev1.pdf

ジェトロ「外資奨励・規制とサービス業進出における規制について:フィリピン」:https://www.jetro.go.jp/world/qa/04J-010456.html

One Asia Lawyers「フィリピンにおける新たな外国投資ネガティブリストについて」:https://oneasia.legal/8836

外務省 海外安全ホームページ:https://www.anzen.mofa.go.jp/

ヤッパン号「フィリピンに進出している日系企業を教えて下さい。」:https://www.yappango.com/faq/glocalizer02.html

亜細亜お散歩マイスター「ラグナテクノパーク 進出企業一覧」:https://asia-study.com/laguna-techno-park/

日揮ホールディングス 海外グループ会社一覧:https://www.jgc.com/jp/about/related-companies/overseas.html


執筆者

金田 大樹

鉄鋼専門商社や株式会社ネオキャリアのフィリピン現地法人での勤務を経て、リサーチ事業にて起業。中堅~大手の調査会社やコンサルティング会社のリサーチのプロジェクト管理を行った。その後、AXIA Marketing(アクシアマーケティング)株式会社を設立し、代表取締役に就任。フィリピン市場の成長を受けて、「AXIA Promotion & Trading Philippines Corporation」を立ち上げ。上場企業をはじめ、多くの企業の成長を「価値ある情報提供力」でサポートしている。

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