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【2026年最新】フィリピンの補助金・公的支援制度を徹底解説|BOI・PEZA・CREATE MOREで活用できる優遇税制とJICA Bizまで

2026-06-29

ノウハウ

【2026年最新】フィリピンの補助金・公的支援制度を徹底解説|BOI・PEZA・CREATE MOREで活用できる優遇税制とJICA Bizまで

フィリピン進出を検討する日本企業からよく聞かれる質問のひとつが、「フィリピンには補助金や公的支援制度はあるのか」というものです。日本国内であれば、ものづくり補助金や事業再構築補助金のように、国や自治体が直接お金を交付してくれる制度が数多く存在します。

しかし、フィリピンにおける公的支援の中心は、現金の交付ではなく、投資委員会(BOI)やフィリピン経済区庁(PEZA)といった投資促進機関に登録することで受けられる税制優遇措置です。

2025年のフィリピンへの対内直接投資(FDI)純流入額は約78億ドルと過去5年で最低水準に落ち込み、政府はCREATE MORE法による優遇拡充に加えて、業種別の臨時措置や規制緩和を矢継ぎ早に打ち出しています。

本記事では、BOI・PEZAの選び方からCREATE MORE法の追加控除の内訳、2026年の最新動向、さらに日本側で活用できるJICAの支援制度まで、現地公的機関の発表に基づいて網羅的に解説します。

フィリピンの「補助金」と日本の「補助金」の違い

フィリピンで「補助金・公的支援制度」と検索する日本企業の多くは、進出コストを抑えるための資金的な支援を期待しているのではないでしょうか。

しかし、フィリピンの制度設計は、企業の収益から税金として徴収する代わりに優遇するという発想が中心です。具体的には、一定期間の法人所得税の免除(ITH:Income Tax Holiday)、免除終了後に適用される総所得5%の特別税(SCIT)、輸入関税やVATの免除、追加控除制度(EDR:Enhanced Deductions Regime)といった仕組みが用意されています。

これらは現金給付ではありませんが、長期的な税負担を大きく軽減できる点で、実質的には強力な進出支援策として機能しています。

フィリピンの公的支援制度の全体像

フィリピンで税制優遇を受けるための流れは、おおむね次のように整理できます。

フィリピンにおける公的支援制度(インセンティブ制度)の全体像を図解したフローチャート。事業内容の適合性確認から立地の検討、PEZAやBOIへの登録、FIRBによる審査を経て、所得税免除(ITH)などの優遇措置適用までの5つのステップが示されている。

このように、フィリピンの公的支援制度を活用するには、まず自社の事業がSIPPに定められた優先分野に該当するかどうかを確認し、その上でBOIまたはPEZA等のいずれに登録すべきかを判断する必要があります。

フィリピン投資委員会(BOI)の優遇措置とは

投資委員会(Board of Investments:BOI)は、貿易産業省の傘下機関で、経済特区の外で事業を行う企業を主な対象としています。オムニバス投資法に基づき登録された企業は、SIPPに記載された優先分野に該当すれば、一定期間の法人所得税の免除や、資本設備・原材料の輸入関税免除、外国人技術者の雇用許可など、複数の優遇措置を受けることができます。

BOI登録のメリットは、経済特区への入居を前提としないため、首都圏や地方都市など事業に適した場所を自由に選べる点にあります。

フィリピン経済区庁(PEZA)と経済特区の優遇措置

製造業やIT-BPM(ITを活用したアウトソーシング事業)などで日本企業が多く活用しているのが、フィリピン経済区庁(PEZA)への登録です。
PEZAが認定する経済特区(エコゾーン)内に拠点を設けることで、パイオニア事業の場合は最長8年程度の法人所得税免除、免除終了後は国税・地方税に代わる5%の特別税率が適用されます。

さらに、輸出製造業を中心に、機械設備や原材料の輸入関税・VATの免除、通関手続きの簡素化といった支援も受けられます。PEZA以外にも、クラーク開発公社(CDC)やスービック湾首都圏庁(SBMA)など、地域ごとに優遇措置を持つ特区が存在します。

フィリピンのBOIとPEZA、補助金的優遇措置はどちらに登録すべきか

BOIとPEZAはいずれも法人所得税の免除を中心とした優遇措置を提供しますが、輸出比率や立地、外国人雇用、役員構成にいたるまで、実務上の要件が大きく異なります。

フィリピンの2大投資優遇機関であるBOI(投資委員会)とPEZA(経済特区庁)を比較した表。最低輸出比率、立地条件、免税終了後の税制、外国人労働者の雇用、最低払込資本金の各項目において、それぞれの要件や違いをまとめている。

なお、外資100%設立であっても、コーポレート・セクレタリー及び財務役員はフィリピン居住者であることが必須で、取締役の過半数も現地居住者であることが求められます。これはBOI・PEZAいずれの登録においても共通する要件です。

輸出比率の高い製造業やIT-BPM企業はPEZA、内需向けのサービス業や、特区に縛られない事業展開を重視する企業はBOIを選ぶケースが多く見られます。

フィリピンのCREATE MORE法で何が変わったのか

2024年11月、マルコス大統領はCREATE法(共和国法第11534号)を改正するCREATE MORE法(共和国法第12066号)に署名しました。

この改正の背景には、CREATE法施行後にVATインセンティブの適用範囲をめぐる解釈の混乱が続き、外国投資家の不満が高まっていたという経緯があります。

主な変更点は3つです。
第一に、追加控除制度(EDR)を選択する登録企業の法人税率が25%から20%に引き下げられました。

第二に、所得税優遇措置の利用可能期間が最大17年間から最大27年間へと延長されました。

第三に、VATゼロ税率の適用要件が「本業に直接かつ排他的に使用」という厳格な表現から「直接帰属する(directly attributable)」という実務的な表現に緩和され、警備や清掃、人事・会計などの管理業務に関連する費用もゼロ税率の対象として明確化されました。

フィリピンの追加控除制度(EDR)で実際に控除できる項目

EDRを選択した登録事業者は、法人税率20%の適用に加え、以下のような追加控除を受けられます。製造業など電力消費の大きい企業ほど、控除メリットが大きくなる設計です。

フィリピンの追加控除制度(EDR)において、法人所得税の計算時に実際に控除・優遇を受けられる項目の一覧表。減価償却費、直接労務コスト、研究開発費、人材トレーニング費用、電力費用など、項目ごとの具体的な優遇内容が記載されている。

フィリピン2026年版SIPP(戦略的投資優先計画)の最新動向

優遇措置の対象業種を定めるSIPPは、原則3年ごとに見直されます。マルコス大統領は2026年5月21日に新しいSIPPを承認し、6月17日から施行されました。前回の改訂が2022年だったため、4年ぶりの大幅な刷新となります。

2026年版では投資優先分野が3つのティアに整理され、ティア1は農林水産業・製造業など基盤産業、ティア2はサプライチェーン強化に関わる重要分野、ティア3は人工知能、量子技術、半導体ウェハ製造、サイバーセキュリティ、インダストリー5.0といった最先端分野が新設されました。

フィリピンの公的支援制度における2026年業種別の最新動向

2026年に入り、フィリピン政府はCREATE MORE法という大枠の制度に加え、業種別の臨時措置や規制緩和を相次いで打ち出しています。CREATE MORE法だけでなく、こうした機動的な運用が「公的支援」の実態を形づくっている点も押さえておきたいポイントです。

フィリピンIT-BPM産業:在宅勤務(WFH)90%の臨時容認

2026年3月24日、マルコス大統領は中東情勢の緊迫化に伴う原油・電気代の上昇を受け、大統領令第110号により「国家エネルギー非常事態」を宣言しました。

これに対応してFIRBは4月10日付でFIRB決議第005-2026号を発出し、PEZA等の経済特区登録企業(RBE)について、登録事業に関わる従業員の最大90%まで在宅勤務(WFH)を認めても、法人所得税免除(ITH)や特別税率(SCIT)などの優遇措置を喪失しない特例を設けました。各投資促進機関(IPA)は事業内容に応じて最低50%以上の出社を求めることも可能です。

本特例は2026年3月24日に遡及適用され、大統領令が継続する限り1年間効力を持ちます。輸出収益水準や雇用水準の維持が条件で、違反時には超過比率に応じた追徴課税が科されます。

フィリピン再生可能エネルギー:外資100%解禁による投資の急増

2022年の規制改正により、太陽光・風力・水力・地熱等の探査・開発・利用について外国人投資家による100%出資が解禁されました。

BOIが発表した2026年1〜2月の投資認可額470億ペソのうち、エネルギー分野(再エネ含む)は224億ペソと47.7%を占め、最大のシェアとなっています。

2月単月では再エネが204億ペソ、月間承認額の55.9%を占めました。BOIの「グリーンレーン」プログラムにおいても、2025年末時点の対象案件6.11兆ペソのうち85.27%が再エネ関連です。

フィリピン自動車産業:RACE/CARSプログラムをめぐる予算の混乱

貿易産業省(DTI)は、従来の包括的自動車産業振興戦略(CARS)の後継として、国内生産支援策「自動車産業競争力強化のための再活性化プログラム(RACE)」を準備していました。

しかし、マルコス大統領は2026年1月5日、2026年度国家予算案の「非プログラム歳出枠」に含まれていたCARS・RACE関連の43.2億ペソに拒否権を行使し、予算から除外しました。

これに対し予算管理省・財務省・貿易産業省は連名で「支援撤回を意味するものではない」との声明を発表し、2025年度の洪水対策予算の余剰分をBOIの予算枠内で活用して支払う方針を示しています。

この一連の経緯は、フィリピンの自動車産業支援が個別の直接補助金ではなく、国家予算の編成や既存の投資促進機関の枠組みに依存して運用される実態をよく示しています。

フィリピン進出における輸出と国内販売の両立を狙う「ハイブリッド構造」

輸出と国内販売の両方を本格的に行う事業計画では、輸出専従のPEZA登録法人と、国内販売を担うBOI登録法人を別々に組成する「ハイブリッド構造」が選択肢に入ります。

それぞれの優遇措置を取り込みながら事業全体を設計できる一方、グループ内取引が生じるため、内国歳入庁(BIR)や証券取引委員会(SEC)への定期報告、移転価格税制への対応が必須となります。立ち上げ初期から法務・税務アドバイザーを起用し、将来の追徴課税リスクを抑えておくことが望ましいでしょう。

フィリピンのグリーンレーン制度による許認可手続きの迅速化

フィリピン政府は、税制優遇だけでなく、許認可手続きそのものを速やかに進めるための仕組みも整備しています。2023年の大統領令により設置された「戦略的投資のためのグリーンレーン」は、戦略的投資と認定された案件について、関係する国家行政機関や地方自治体が許認可の発行プロセスを優先的に処理する制度です。

手続きの遅延がフィリピン進出の大きなリスクとされてきた中で、この制度はスケジュールの見通しを立てやすくする実務的な支援策として注目されています。

日本側の公的支援制度も併用できる:JICA Biz

フィリピン側の税制優遇に加えて、日本側にも活用できる公的支援制度があります。国際協力機構(JICA)が運営する「中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA Biz)」は、開発途上国の課題解決に資する製品・技術・サービスを持つ中小企業等のビジネス展開を支援する制度で、対象国でのニーズ検証を行う「ニーズ確認調査」(調査経費上限1,500万円・期間上限12か月)と、ビジネスプラン策定を目的とする「ビジネス化実証事業」(経費上限4,000万円・期間上限2年6か月)の2メニューがあります。

2025年度は62件が採択され、分野別では農業(22.6%)、保健医療(16.1%)が中心です。フィリピンを対象とした採択例としては、株式会社フェイガーによる二国間クレジット制度(JCM)を活用した節水稲作推進事業や、フジクリーン工業による浄化槽技術の普及・実証事業などがあります。

JICAが長年築いてきたフィリピン政府機関とのネットワークを活用できる点が大きな利点で、税制優遇の活用を検討する前段階の市場調査・実証フェーズにおいて、自己資金の負担を抑えながら現地適合性を検証できます。

公的支援制度を活用するための実務フロー

実際に優遇措置の申請を進める際は、以下のような順序で検討することをお勧めします。

フィリピンの公的支援制度を活用するための実務的な流れを図解したスライド。事業内容のSIPP(戦略的投資優先計画)照合、立地の検討、投資促進機関への登録申請、FIRB審査後の登録証(CO

公的支援制度だけでは進出は成功しない

ここまで見てきたように、フィリピンの公的支援制度は、現金交付型の「補助金」ではなく、税制優遇を中心とした「投資奨励制度」です。

BOIやPEZAへの登録、CREATE MORE法による優遇措置の延長、2026年版SIPPによる優先分野の拡大、さらにIT-BPMの在宅勤務特例や再エネへの外資100%解禁といった機動的な運用は、いずれも進出企業にとって追い風となる制度です。

これらを活用できるかどうかは、事業計画がSIPPの優先分野に合致しているか、登録手続きを適切に進められるかという実務面に大きく左右されます。

さらに、税制優遇を受けられたとしても、現地市場で実際に売上を立てられるかどうかは別の課題です。市場調査や現地でのテストマーケティング、販売パートナーの選定といった「0→1」の実行支援が伴ってこそ、優遇制度のメリットを最大限に活かすことができます。

フィリピン進出のご相談はAXIA Promotion & Trading Philippines Corporationへ

フィリピンにおける補助金・公的支援制度は、日本の制度とは仕組みが大きく異なり、自社の事業がどの優遇措置の対象になるのか、どの投資促進機関に登録すべきかを正確に見極める必要があります。

さらに、SIPPやCREATE MORE法のような制度は今後も改訂が続くと見込まれるため、申請時点だけでなく登録後も最新動向を継続的に確認していく姿勢が求められます。

AXIA Promotion & Trading Philippines Corporationでは、現地拠点を活かした市場調査や現地視察、テストマーケティングから、営業代行・販売代理店の選定まで、フィリピン進出を「調査で終わらせない」実行支援としてご提供しています。税制優遇制度の活用を含めたフィリピン進出全体の進め方について検討されている方は、ぜひAXIA Promotion & Trading Philippines Corporationまでお問い合わせください。

出展

ジェトロ「外資に関する奨励」
https://www.jetro.go.jp/world/asia/ph/invest_03.html

ジェトロ「貿易投資相談Q&A」
https://www.jetro.go.jp/world/qa/04J-010456.html

ジェトロ「フィリピン外資に関する各種優遇措置」
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/country/ph/invest_03/pdfs/ph8B010_yuuguusochi.pdf

Philippine Hub Partners「PEZA Vs BOI: Which Is Better For Foreign Investors In 2026」
https://philippinehubpartners.com/peza-vs-boi-foreign-investors-philippines-2026/

ジェトロ「企業復興税優遇法の改正法(CREATE MORE法)が成立」
https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/11/4df8f3cce0ac5025.html

モノリス法律事務所「フィリピンの税法を弁護士が解説」
https://monolith.law/corporate/philippines-tax-law

Triple i Consulting「Tax Incentives for Foreign Companies PH」
https://www.tripleiconsulting.com/tax-incentives-opportunities-for-foreign-companies-philippines/

Science Portal ASEAN「2026年版『戦略的投資優先計画(SIPP)』を承認」
https://spap.jst.go.jp/asean/news/260603/topic_na_05.html

フィリピン財務省(DOF)「FIRB allows temporary WFH for ecozone businesses amid national energy emergency」
https://www.dof.gov.ph/firb-allows-temporary-wfh-for-ecozone-businesses-amid-national-energy-emergency/

BOI「BOI-Approved Projects Up 338%, Investments Reach Php47 Billion in Jan-Feb 2026」
https://boi.gov.ph/boi-approved-projects-up-338-investments-reach-php47-billion-in-jan-feb-2026/

ジェトロ「フィリピン貿易産業省、自動車国産化推進に意欲」
https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/02/7df8ee22105b3073.html

One Asia Lawyers「フィリピンにおける投資促進に向けた戦略的投資のためのグリーンレーンの設置について」
https://oneasia.legal/9762

JICA「2025年度『中小企業・SDGsビジネス支援事業(JICA Biz)』:62件の採択を決定」
https://www.jica.go.jp/information/press/2025/20251222_11.html

PwC Japanグループ「フィリピンの税務環境とCREATE MORE施行による期待」
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/prmagazine/pwcs-view/202502/54-05.html

執筆者

金田 大樹

鉄鋼専門商社や株式会社ネオキャリアのフィリピン現地法人での勤務を経て、リサーチ事業にて起業。中堅~大手の調査会社やコンサルティング会社のリサーチのプロジェクト管理を行った。その後、AXIA Marketing(アクシアマーケティング)株式会社を設立し、代表取締役に就任。フィリピン市場の成長を受けて、「AXIA Promotion & Trading Philippines Corporation」を立ち上げ。上場企業をはじめ、多くの企業の成長を「価値ある情報提供力」でサポートしている。

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