2026-07-30
ノウハウ
福岡を訪れるフィリピン人観光客はなぜ急増しているのか|インバウンド最新データと現地ニーズを徹底解説

福岡県を訪れる外国人観光客といえば、これまで韓国・台湾・香港・中国が主役でした。
しかし近年、その顔ぶれに新たな存在感を放っているのがフィリピンです。人口約1億1,000万人、平均年齢25歳という若い国から、なぜ今フィリピン人観光客が福岡を目指すのか。
本記事では、統計データと現地の観光ニーズを照らし合わせながら、その実情を詳しくお伝えします。
- 訪日外国人観光客数の全体動向|日本全体で今何が起きているのか
- 2025年は過去最高の4,268万人を記録
- 中国減速のなか、韓国・台湾・フィリピンが牽引
- 福岡のインバウンド市場でフィリピンの存在感が高まっている理由
- データで見る、福岡県へのフィリピン人入国者数の推移
- 九州運輸局データで見る月別推移
- フィリピン人観光客が福岡県に求めているものとは
- 食事制限がなく受け入れやすい
- 四季の景観への憧れとコト消費
- カトリック文化と巡礼ツアーへの関心
- 典型的な周遊行動とUGCの連鎖
- フィリピン×福岡県間のアクセス事情と広域周遊の実態
- JR九州レールパスが広域周遊を後押し
- 減便リスクとプロモーション動向
- フィリピン人に人気の福岡県内観光スポットランキング
- ショッピングエリアの支持も根強い
- 福岡県でのフィリピン人観光客の消費動向とインバウンド需要
- FIT客特有の情報収集行動
- 福岡県の事業者が取るべきフィリピン人インバウンド対応ステップ
- SNS発信を怠れば選択肢にすら入らない可能性もある
- まとめ:フィリピン人観光客を福岡県へ呼び込むために
- フィリピン進出・インバウンド対応のご相談はAXIA Promotion & Trading Philippines Corporationへ
訪日外国人観光客数の全体動向|日本全体で今何が起きているのか
福岡のフィリピン人観光客の実情を見る前に、まず日本全体の訪日外国人観光客の動きを押さえておきましょう。
2025年は過去最高の4,268万人を記録
日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2025年の年間訪日外国人旅行者数は4,268万人となり、過去最高を更新しました。
2026年に入ってからも高水準の訪日者数が続いていますが、2026年1月から5月までの累計は1,793万6,000人で、前年同期比1.1%減とわずかに前年を下回っています。その主な要因は中国からの旅行者数が同期間で56.2%減と大きく落ち込んだことにあり、中国依存からの構造転換が進んでいる時期といえます。
中国減速のなか、韓国・台湾・フィリピンが牽引
一方で、韓国は前年同期比20.6%増、台湾は同22.3%増と大きく伸びており、東南アジア各国も総じて堅調です。
フィリピンについても、2026年1月から5月までの累計は41万4,400人で前年同期比7.7%増と、着実に増加を続けています。
つまり日本全体では中国という一大市場の変動に揺れながらも、韓国・台湾・そしてフィリピンを含む東南アジア諸国が新たな成長エンジンとして存在感を高めているのが、今の訪日インバウンド市場の構図です。
こうした全国的な潮流の中で、福岡県はどのようなポジションにあるのでしょうか。ここからは福岡県、そして福岡市に絞ってフィリピン人観光客の実態を見ていきます。
福岡のインバウンド市場でフィリピンの存在感が高まっている理由
2025年の年間訪日フィリピン人数は88万5,023人となり、旅行消費額も過去最高の1,636億円を記録しました。一人当たりの旅行支出額は18万7,760円に達しており、単なる人数の増加にとどまらず、一人ひとりの消費力も高まっている点が特徴です。
人口ボーナス期と英語環境が後押し
この背景には、フィリピン特有の人口構造があります。
同国の人口は約1億1,000万人で、平均年齢はおよそ25歳という、いわゆる人口ボーナス期にあります。
好調な経済成長により中間層の購買力が拡大し、海外旅行が現実的な選択肢になったこと、そして英語が広く通じるため個人手配旅行(FIT)への移行がスムーズであることも、訪日需要を押し上げる要因となっています。
e-Visa導入と日比国交正常化70周年
加えて、渡航のハードルそのものが下がっています。2025年12月15日からは日本政府によるパッケージツアー向けの電子ビザ(e-Visa)の発給が始まり、日本ビザ申請センター(JVAC)を通じた申請が可能になりました。
さらに2026年は日比国交正常化70周年にあたり、両国で文化・観光プロモーションが展開されていることも、フィリピン市場にとって強い追い風となっています。
データで見る、福岡県へのフィリピン人入国者数の推移
では、実際に福岡県・九州にはどれほどのフィリピン人観光客が訪れているのでしょうか。
九州運輸局データで見る月別推移
国土交通省九州運輸局が毎月公表している入国者数統計から、実数ベースで見ていきます。2026年に入ってからのフィリピンからの九州入国者数(船舶観光上陸を含む)は以下のように推移しています。

特に2026年3月は前年同月比162.4%と大きく伸びており、九州全体の入国者数が中国からの落ち込みで前年割れとなる中でも、フィリピンはASEAN諸国の中で突出した伸びを見せています。
全国ベースで見ても、2026年3月の訪日フィリピン人数は9万100人(前年同月比24.6%増)、1月から3月までの累計では24万1,000人(同14.1%増)と、着実な右肩上がりが続いています。
福岡市における中長期的なシェア拡大
福岡市単体のデータを見ると、フィリピンの存在感はさらに鮮明になります。2024年の福岡市における外国人入国者に占めるフィリピンの割合は2.9%で、韓国・台湾・香港・中国に次ぐ第5位。2019年時点では上位5地域に入っていなかったことを考えると、コロナ禍後の回復期にフィリピン市場が急速に台頭したことがわかります。
福岡市への外国人入国者総数(船舶観光上陸を除く)が年間約390万人であることから逆算すると、年間およそ11万3,000人のフィリピン人観光客が福岡市を訪れている計算になります。
フィリピン人観光客が福岡県に求めているものとは
フィリピン人観光客の観光ニーズには、他のアジア諸国と比べて際立った特徴があります。
食事制限がなく受け入れやすい
マレーシアやインドネシアのようなハラール食対応を必要とする層がほとんどいないため、博多ラーメンや焼き鳥、和牛といったローカルフードを特別な対応なしにそのまま提供できる点は、受け入れ側にとって大きな利点です。
四季の景観への憧れとコト消費
年間を通じて温暖な気候のフィリピンには存在しない「雪・桜・紅葉」といった四季の景観への憧れが強く、写真映えする体験型の消費、いわゆる「コト消費」への関心が高まっています。福岡県久留米市が取り組んだフルーツ狩り施設の多言語予約サイト整備は、こうしたニーズを的確に捉えた好例といえます。
カトリック文化と巡礼ツアーへの関心
さらに見逃せないのが宗教的な背景です。フィリピンはカトリック教徒が国民の約8割を占めており、キリスト教関連の歴史遺産への関心が根強くあります。九州運輸局や長崎県内の自治体が展開する「長崎巡礼ツアー」の招請事業は、こうした精神的な充足を求める層に向けた高付加価値コンテンツとして注目されています。
典型的な周遊行動とUGCの連鎖
来訪目的を整理すると、次のような流れで福岡県内を周遊するケースが多く見られます。
福岡空港到着 → 天神・博多エリアでのショッピング&グルメ体験 → JR九州レールパスを利用した近隣県への周遊(佐賀・長崎・熊本など) → SNSへの投稿・口コミ拡散 → 現地の友人・家族が次の旅行者として来訪
この一連の流れが繰り返される「UGC(ユーザー生成コンテンツ)の循環連鎖」こそが、フィリピン市場の集客を語るうえで欠かせないポイントです。一度の来店・来訪をゴールにするのではなく、次の集客のスタート地点として設計する発想が求められます。
フィリピン×福岡県間のアクセス事情と広域周遊の実態
フィリピンから福岡へのアクセス環境は年々改善しています。福岡空港とマニラ・ニノイ・アキノ国際空港の間には、フィリピン航空およびセブ・パシフィック航空による直行便が就航しており、所要時間は約4時間です。便数は需要に応じて週9便から週23便の間で調整されながら運航されています(2026年7月時点)。
JR九州レールパスが広域周遊を後押し
福岡到着後の広域移動では、JR九州が販売する「JR九州レールパス」がフィリピン人ファミリー層から高い支持を得ています。九州新幹線や特急列車が乗り放題になるこのパスは、大人数での移動を好む家族連れにとって、吉野ヶ里遺跡や嬉野温泉、熊本・大分・宮崎・鹿児島といった広域観光地へストレスなく足を伸ばすための実用的な手段となっています。全九州エリア対応の3日間用パスは大人17,000円、こども8,500円で販売されており、追加料金なしで指定席を最大6回まで利用できる点も、初めて日本を訪れるフィリピン人ファミリーにとって心強いポイントです。
減便リスクとプロモーション動向
ただし、世界的な原油価格の高騰に伴う減便の動きも一部で見られるため、座席供給の安定確保は今後の課題として意識しておく必要があります。セブ・パシフィック航空が展開してきた創業30周年の大型プロモーションキャンペーンは、フィリピンの若い世代やファミリー層による福岡をはじめとした地方誘客を強力に後押ししてきた実績があり、こうした航空会社側の販促動向も継続的にチェックしておきたいところです。
フィリピン人に人気の福岡県内観光スポットランキング
福岡県内でフィリピン人観光客からの評価が高いスポットを見ると、「ショッピング」「SNS映え」「体験・歴史文化」という三つの要素が色濃く反映されています。

ショッピングエリアの支持も根強い
このほか、天神地下街は天候を気にせず化粧品や衣料品をまとめ買いできる利便性から家族連れに支持されており、キャナルシティ博多は2026年4月発表の「インバウンド人気商業施設ランキング」で全国1位を獲得しています。
福岡県でのフィリピン人観光客の消費動向とインバウンド需要
福岡市内での外国人観光客のクレジットカード利用金額を見ると、「百貨店・ショッピングセンター」が全体の35%と最も大きく、次いで「免税店」が13%、「ホテル・旅館」が12%と続きます。フィリピン人観光客はこの傾向とも合致しており、購買意欲の高さがうかがえます。
FIT客特有の情報収集行動
福岡市の外国語版観光情報サイトは年間174万PVを記録し、そのうち英語ページの閲覧が39%を占めています。英語が公用語であるフィリピン人FIT客が、公共交通機関を利用しながら自発的に市内や周辺地域を周遊している様子が、このアクセスデータからも読み取れます。こうした傾向は、団体ツアーで移動する観光客とは異なる受け入れ対応を求めます。決まったルートを巡るツアー客と違い、FIT客は「福岡ツーリストシティパス」のような交通情報や、モデルルートをまとめた記事を自ら検索して行動を組み立てています。店舗や施設側としては、英語での情報発信を単発で終わらせず、交通アクセスや周辺の周遊プランまで含めた形で継続的に発信することが、来訪につながる導線になります。
福岡県の事業者が取るべきフィリピン人インバウンド対応ステップ
フィリピン市場での集客を継続的な成果につなげるには、段階を踏んだ準備が欠かせません。以下のように、時期ごとに取り組むべき内容を整理すると全体像が把握しやすくなります。
SNS発信を怠れば選択肢にすら入らない可能性もある
フィリピンにおけるインターネットユーザーのFacebook利用率は97%に達しており、情報収集の入口としてSNSの存在感は極めて大きいことが知られています。公式SNSでの継続的な発信を怠ると、そもそも旅行先の比較検討候補にすら上がらないというのが実情です。
まとめ:フィリピン人観光客を福岡県へ呼び込むために
フィリピン発の福岡インバウンド市場は、一時的なブームではなく、若い人口構成・英語環境・渡航手続きの簡素化という構造的な要因に支えられた、中長期的に伸びていく市場です。九州運輸局やJNTOの統計が示す通り、月によって変動はあるものの、年間を通じては着実な増加傾向にあります。ハラール対応が不要である点、四季への憧れ、キリスト教文化への親和性など、他の東南アジア市場とは異なる独自のニーズを理解し、受け入れ体制とSNS発信を段階的に整えていくことが、これからの誘客成功のカギとなります。
フィリピン進出・インバウンド対応のご相談はAXIA Promotion & Trading Philippines Corporationへ
フィリピン市場の開拓では、現地のローカライズに関する一次データの不足や言葉の壁、文化的なニュアンスの違いが大きな障壁になりがちです。
AXIA Promotion & Trading Philippines Corporationは、フィリピン・マニラのマカティ地区を拠点に、現地マーケティングの戦略策定から実行までを一気通貫でサポートしています。窓口はすべて日本人が対応するため、言葉のズレなくスムーズにプロジェクトを進めることができます。
福岡県・九州エリアでのフィリピン人観光客誘致や、フィリピン市場進出をご検討の際は、ぜひAXIA Promotion & Trading Philippines Corporationまでお気軽にお問い合わせください。
出典・参考資料
日本政府観光局(JNTO) https://www.jnto.go.jp/
訪日ラボ https://honichi.com/
在フィリピン日本国大使館 https://ph.emb-japan.go.jp/
国土交通省九州運輸局「九州への外国人入国者数の推移について」 https://wwwtb.mlit.go.jp/kyushu/
福岡市「観光・MICE」2025年版 https://www.city.fukuoka.lg.jp/
口コミコム/訪日ラボ「2025年最新インバウンド人気観光地ランキング[福岡県編]」 https://prtimes.jp/
フクリパ(福岡地域戦略推進協議会) https://fukuoka-leapup.jp/
九州・西日本インバウンドプロモーション https://inbound.japan-tour.jp/

執筆者
金田 大樹
鉄鋼専門商社や株式会社ネオキャリアのフィリピン現地法人での勤務を経て、リサーチ事業にて起業。中堅~大手の調査会社やコンサルティング会社のリサーチのプロジェクト管理を行った。その後、AXIA Marketing(アクシアマーケティング)株式会社を設立し、代表取締役に就任。フィリピン市場の成長を受けて、「AXIA Promotion & Trading Philippines Corporation」を立ち上げ。上場企業をはじめ、多くの企業の成長を「価値ある情報提供力」でサポートしている。
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