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フィリピンの法人税とPEZA優遇制度を徹底解説 |  CREATE MORE法対応版

2026-06-29

ノウハウ

フィリピンの法人税とPEZA優遇制度を徹底解説 |  CREATE MORE法対応版

フィリピンへの進出を検討する際、必ず突き当たるのが法人税の仕組みと、PEZA(フィリピン経済特区庁)をはじめとする投資優遇制度をどう活用するかという論点です。

「フィリピン 法人税 PEZA」で検索する方の多くは、税率そのものに加え、自社にとってPEZA登録が得なのか、BOI(投資委員会)との違いは何か、登録後にどんな実務対応が必要かを知りたいはずです。製造業なのかBPOなのか、輸出中心なのか国内販売中心なのかによって最適な選択は変わるため、一般論だけでは判断がつきにくいというのが実情です。

こうした改革の効果は投資統計にも表れています。フィリピン投資委員会(BOI)の2025年の投資認可額は1兆5,600億ペソと過去2番目の高水準を記録し、経済特区庁(PEZA)の2025年投資認可額も前年比21.9%増の約2,609億ペソに達しました。

韓国サムスン電機の現地子会社による507億ペソの大型投資プロジェクトがCREATE MORE法の優遇措置を適用した第1号となったことも、外資系企業からの信頼の高さを示しています。

本記事では2024年に成立し、2025年2月から完全運用が始まった「CREATE MORE法」を踏まえ、フィリピンの法人税制とPEZAの優遇措置を実務目線で整理します。

フィリピンの法人税率はいくら? 基本ルールを解説

フィリピンの法人所得税(CIT)は内国法人・居住外国法人ともに原則25%です。課税所得500万ペソ以下かつ総資産1億ペソ以下(土地を除く)の小規模法人には20%の軽減税率が適用されます。

最低法人所得税(MCIT)は2023年7月から本来の2%に戻り、設立直後で利益が出ていない企業でも一定の税負担が生じます。PEZAやBOIに未登録の一般法人はこの25%(または20%)を通常通り負担するため、優遇制度はここからどれだけ税率を下げられるかという比較軸で語られます。

PEZAとは?フィリピンの法人税が優遇される仕組み

PEZAは輸出型の製造業やITサービス業などを対象に、経済特区内での事業活動に税制優遇を与える政府機関です。PEZAに登録した企業(Registered Business Enterprise、RBE)は、一定期間の法人所得税免除(Income Tax Holiday、ITH)を受けたあと、特別法人所得税(SCIT、粗所得の5%)または追加控除制度(Enhanced Deductions Regime、EDR)のいずれかに移行する仕組みが用意されています。

2024年11月に成立したCREATE MORE法(共和国法第12066号)により、EDRを選択した登録事業者の法人税率は従来の25%から20%へ引き下げられました。

さらに電力費用の上乗せ控除が50%から100%へ倍増するなど、製造業にとって負担の大きい固定費を控除対象として取り込みやすくなっています。研究開発費や従業員トレーニング費用についても同様に100%の上乗せ控除が認められており、人材育成や技術移転を進める企業にとっても有利な制度設計になっています。

ここで重要なのは、ITHを使わずに最初からEDRを選ぶという選択肢が制度上認められている点です。設備投資がかさみ初年度から赤字が見込まれる場合、無税期間であるITHをあえて使わず、課税所得が出る前提でEDRの上乗せ控除を積み上げたほうが、長期的な実効税率(ETR)を下げられるケースがあります。

反対に、立ち上げ初期から安定的に利益が出る見込みのビジネスモデルであれば、まずITHで無税期間を確保したほうが有利になることも多く、どちらが得かは個々の事業計画次第で変わってきます。

一度選択したインセンティブパッケージは原則として登録期間中変更できないため、進出前の財務シミュレーションが欠かせません。

フィリピンのPEZA・BOI登録、判断フローで解説

PEZA登録を検討する企業の意思決定を簡略化すると、まず輸出比率を確認し、高ければPEZA、国内向けが中心であればBOIという大枠の振り分けになります。下図のように、立地条件や登録区分を順に確認していくと、自社に合う優遇パッケージが見えてきます。

フィリピンにおけるPEZA(経済特区庁)とBOI(投資委員会)の登録判断フローチャート。事業の輸出比率(目安70%以上か国内向けか)や特区への入居可否、内需型要件の適合状況によって、PEZA登録かBOI登録かを切り分ける流れを図解している。

この判断軸はあくまで出発点であり、実際には投資額や進出予定地(マニラ首都圏か地方都市か)によって優遇年数が変わります。投資額150億ペソ以下のIPA承認案件では、マニラ首都圏で4年のITHに10年のSCITまたはEDRを組み合わせるパターン、地方都市では6年のITHに10年というように、立地によって優遇期間に差がつきます。

投資額が150億ペソを超える大型案件はFIRB(財政インセンティブ審査委員会)の承認案件となり、優遇期間そのものもさらに延長される仕組みです。

フィリピン進出はPEZAとBOIどちらを選ぶべきか

PEZAとBOIはどちらも投資誘致機関ですが、選択基準は優遇の大きさではなく事業モデルとの整合性にあります。輸出比率が高く、特区内の工業団地やITパークビルへの入居に抵抗がない製造業やBPO企業はPEZAに向いています。

特区内には税関職員が常駐しており、原材料の輸入や製品の輸出にかかる通関がスムーズになる点も実務上の利点です。

一方、国内市場向けに製品やサービスを販売する企業、あるいは自社で土地を確保して工場や発電施設を建てたい企業はBOIのほうが適しています。BOIは物理的な経済特区への入居を必須としないため、立地の自由度が高いのが特徴です。

再生可能エネルギーの発電所や大規模な農業プロジェクトのように、広大な敷地を自社所有で確保する必要がある事業は、特区入居というPEZAの前提条件自体がそもそも合わないため、BOI登録を選ぶケースが多くなります。

フィリピン進出におけるPEZAとBOIのどちらを選ぶべきかを比較した表。主な対象(輸出型企業か国内市場向けか)、立地(経済特区内か国内の任意の場所か)、通関の迅速さ、在宅勤務の制約といった項目でそれぞれの違いをまとめている。

資本金の要件も、PEZAとBOIのどちらを選ぶかに影響します。外国投資法上、輸出比率60%以上の企業は「輸出型企業」と定義され、外資比率にかかわらず法定の最低資本金は5,000ペソと非常に低く設定されていますが、実務上は初期費用をまかなうため1万〜5万米ドル程度の送金が推奨されます。
(なお、PEZA特区への入居やVATゼロレートの実務上の目安となる輸出比率は70%程度とされており、両者は異なる基準である点にご留意ください。)

一方、外資比率が40%超の国内市場向け企業(DME)は、原則として最低資本金20万米ドルが要求されます。ただし先端技術を導入している場合や、直接雇用するフィリピン人が50名以上であることを証明できる場合は、10万米ドルへ緩和される仕組みになっています。

優遇期間そのものも、2026年6月に施行された最新の「2026年版戦略的投資優先計画(SIPP)」によって細分化されています。

SIPPは対象産業をTierI(農林水産業や医療、IT-BPMなど現代的基礎需要産業)、TierII(EVやバッテリー、重要鉱物精錬などサプライチェーン強化産業)、TierIII(AI、量子コンピューティング、半導体前工程ファブなど先端技術産業)の3段階に区分し、より先端的な産業ほど優遇期間が長くなる設計になっています。

同じ投資額・立地条件でも、自社の事業がどのTierに該当するかによってITHやSCIT/EDRの適用年数が変わるため、登録申請前にSIPP上の産業分類を確認しておくことが実務上のポイントになります。

登録手続きの大まかな流れも押さえておきたいところです。PEZAの場合、事業計画書や企業概要、財務計画などの必要書類を提出し、PEZA理事会の承認を受けたうえで登録証(Certificate of Registration)が発行されます。

その後、特区内の物件契約や設備の輸入手続きへと進む流れになります。BOIの場合も同様に事業計画書の提出と審査を経て登録証が発行されますが、特区への入居が前提とならない分、立地選定や工場建設のスケジュールと並行して登録手続きを進める企業が多く見られます。

いずれの機関でも、登録時に選択したインセンティブパッケージや事業区分(REE・DME・HVDMEなど)は登録期間中の変更が原則認められないため、申請前の段階で税務・財務の両面から十分なシミュレーションを行っておくことが、後々のトラブルを避けるうえで欠かせません。

PEZA登録後に見落としやすい3つの実務ポイント

PEZAとBOIのどちらを選ぶにせよ、登録後の実務運用では見落とされやすい論点が三つあります。

第一にVATのゼロレート適用範囲です。これまでPEZA登録企業は「登録事業に直接かつ排他的に使用される」物品・サービスのみがVATゼロレートの対象とされ、警備費や清掃費、会計・法務アドバイザリー費用などに12%のVATが課されるケースが多く見られました。
CREATE MORE法では「直接帰属する」という基準に緩和され、こうした管理支援部門の費用も含めてゼロレートの対象になり得るようになっています。

ただし、すべての費用が自動的にゼロレート扱いになるわけではなく、個別の費用が事業との合理的な関連性を持つことをIPA(投資誘致機関)に説明できる体制を整えておくことが、実務上は引き続き重要です。

第二に在宅勤務(WFH)の扱いです。PEZA登録企業は原則として従業員の最大50%までしか在宅勤務を認められておらず、これを超える比率で運用したい場合は登録時の機関選択が重要になります。

2026年3月、中東情勢の緊迫化を受けて大統領令第110号により国家エネルギー非常事態が宣言されたことを受け、FIRBは同年4月10日付の「FIRB Resolution No. 005-2026」により、一時的に最大90%までのWFHを認める措置を発令しました。

この措置は非常事態宣言が続く間(最長1年)の時限的なものであり、IPAが定める比率を超えた場合には通常法人税率でのペナルティが発生する点に注意が必要です。

また、PCやサーバーなどの資産を従業員の自宅へ持ち出す場合は、事前にIPAの承認を受け、関税相当額の履行保証金を差し入れる必要があり、実際に在宅勤務制度を運用する際の手間として認識しておくべきポイントです。

第三に日比間の資金還流コストです。日本とフィリピンの租税条約は2026年2月に「実質合意」に達し、親子会社間配当(親会社が現地法人の資本90%以上を保有)の源泉税率を10%から5%へ引き下げる方向で交渉が進んでいます。

ただし2026年6月現在、条約はまだ署名・発効しておらず、現行条約に基づく源泉税率(10%/15%)が引き続き適用されています。

今後の署名・国会承認の動向によって優遇開始のタイミングが決まるため、配当実施計画を立てる際は最新の発効状況を必ず確認することが重要です。

まとめ:フィリピンの法人税とPEZA優遇制度の選び方

フィリピンの法人税は原則25%、登録企業は段階的な優遇を受けられますが、その内容はCREATE MORE法によって大きく書き換えられました。PEZAかBOIかという選択は、税率の大小ではなく自社の輸出比率や立地ニーズに基づいて判断すべきものであり、VATの直接帰属基準やWFHルールなど、登録後の実務運用まで見据えた検討が欠かせません。

また、2026年版SIPPによる産業Tierの分類や、新日比租税条約による配当源泉税率の引き下げなど、進出のタイミングによって有利な制度が変わる場面も増えてきています。書類上の税率だけを比較するのではなく、自社の事業計画に即した実効税率(ETR)のシミュレーションを行うことが、結果的に最も大きな差を生むポイントだといえます。

制度は毎年のように更新されており、本記事の内容も今後の実施規則の改正によって変わる可能性があります。フィリピンでの法人設立やPEZA・BOI登録、税務スキームの具体的な検討については、現地の実情を踏まえた個別の判断が必要です。

フィリピン進出に関するご相談は、AXIA Promotion & Trading Philippines Corporationへ

フィリピンでの法人設立、PEZA・BOIへの登録、市場調査や販路開拓まで、フィリピン進出にまつわるお悩みは多岐にわたります。本記事でご紹介した税制優遇も、実際にどの制度が自社に最適かは、事業内容や進出目的によって大きく変わってきます。

フィリピン市場に詳しいAXIA Promotion & Trading Philippines Corporationでは、貴社の状況に合わせた進出戦略のご提案から、現地でのサポートまで一括して対応しております。フィリピン進出をご検討の際は、お気軽にAXIA Promotion & Trading Philippines Corporationまでお問い合わせください。

出展

PwC Tax Summaries: Philippines Corporate Tax Credits and Incentives
https://taxsummaries.pwc.com/philippines/corporate/tax-credits-and-incentives

PEZA公式: Fiscal Incentives
https://peza.gov.ph/fiscal-incentives

JETRO: 企業復興税優遇法の改正法(CREATE MORE法)が成立(フィリピン)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/11/

JETRO: BOIの2025年投資認可額は1兆5,600億ペソ、過去2番目の高水準(フィリピン)
https://www.jetro.go.jp/biznews/

JETRO: PEZAの2025年投資認可額は約2,609億ペソ、前年比21.9%増(フィリピン)
https://www.jetro.go.jp/biznews/

FIRB: CREATE MORE
https://firb.gov.ph/create-more/

BOI: 2026 Strategic Investment Priority Plan
https://boi.gov.ph/

Deloitte Southeast Asia: Resolving uncertainty on B2B local sales
https://www2.deloitte.com/sg/en/pages/tax/articles/resolving-uncertainty-on-b2b-local-sales.html

財務省: フィリピンとの新租税条約
https://www.mof.go.jp/

FIRB Advisory 005-2026(WFH特例)
https://firb.gov.ph/

執筆者

金田 大樹

鉄鋼専門商社や株式会社ネオキャリアのフィリピン現地法人での勤務を経て、リサーチ事業にて起業。中堅~大手の調査会社やコンサルティング会社のリサーチのプロジェクト管理を行った。その後、AXIA Marketing(アクシアマーケティング)株式会社を設立し、代表取締役に就任。フィリピン市場の成長を受けて、「AXIA Promotion & Trading Philippines Corporation」を立ち上げ。上場企業をはじめ、多くの企業の成長を「価値ある情報提供力」でサポートしている。

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