2026-05-13
ノウハウ
フィリピンEC参入を検討する日本企業が知っておくべきこと

東南アジアの中で今もっとも「次の一手」として注目される市場はどこかと聞けば、多くのマーケターはフィリピンの名を挙げるだろう。
人口1億1,300万人、若年層が分厚く、日本製品への信頼が高く、しかもEC普及がまだ発展途上——この組み合わせは、参入する企業にとって「成長の余白が大きい」ことを意味する。
2022年には小売業への外資規制が緩和され、日系企業の参入障壁が法的にも大幅に下がった。ただし、市場の可能性と自社の売上は別物だ。
制度が整っても、現地の消費者インサイトや購買チャネルを理解しなければ、商品はいつまでも売れ残ったままになる。
この記事では、フィリピンECの現在地を数字で正直に見たうえで、現地で実際に機能している販売チャネルと消費者の行動様式を丁寧に解説する。
フィリピンEC市場の規模感——2024〜2029年の成長軌道
まず最初に、フィリピンのEC市場規模を俯瞰しておきたい。
市場調査会社Mordor Intelligenceの分析によると、フィリピンのEコマース市場は2024年に約155億ドルに達すると推計されており、年平均成長率(CAGR)13.78%で拡大を続け、2029年には約296億ドルに達すると予測されている。
わずか5年で市場が約2倍になるという試算だ。

注目すべきは成長率だけではない。現時点の「1人あたり年間EC消費額が91ドル」という数値だ。
日本と比較すると依然低水準にあるが、これは逆説的に「伸びしろ」を示す。市場の絶対規模が拡大しながらも、一人ひとりの購買額がまだ小さいということは、今後の中間層拡大と購買単価の上昇によって市場が二重に膨らむシナリオが現実的だということを意味する。
日本商工会議所のレポートでも、2030年にかけて中間層が現在比8.5ポイント以上拡大するとの予測が示されており、参入タイミングとして今が重要なフェーズにあることが裏づけられている。
フィリピン経済はコロナ禍後の回復が堅調で、IMFは2025年の実質GDP成長率を6.5%と予測しており、購買力の底上げが着実に進んでいる点も追い風だ。
フィリピンのデジタル環境——「SNS大国」が生む購買行動の特殊性
フィリピンEC市場の本質を理解するには、フィリピン人がインターネットとどう向き合っているかを先に知る必要がある。DataReportalおよびWe Are Socialの2025年データが示す数字は、日本のEC常識を根底から揺るがすほど強烈だ。

スマートフォンの所持率が98.5%というのは驚異的な数字だが、さらに重要なのはSNSの使われ方だ。
Facebookは単なる交流ツールではなく、情報収集・商品レビューの確認・ライブ配信視聴・グループでの口コミ確認と、購買プロセスのほぼ全段階に関与している。
商品を「検索して探す」というより、SNSのフィードを流し見していて「出会ってしまう」——この消費行動の根本的な違いを理解しておかないと、どれだけ商品ページを最適化してもなかなか売上につながらない。
さらに注目すべきは、フィリピン人の1日あたりのSNS平均利用時間が約3時間と、世界でもトップクラスの水準にあることだ。
これはつまり、1日に3時間分の「商品と出会う接点」がSNS上に存在することを意味する。
この長大な接触時間こそが、インフルエンサーマーケティングとライブコマースが他国以上に効果を発揮する根本的な理由だ。

フィリピンで使われている主要ECプラットフォーム
現在フィリピンのEC市場を動かしている主要プラットフォームは、Shopee・Lazada・TikTok Shopの三者だ。
この三つは単なる「売り場」ではなく、それぞれ異なる消費者層・購買行動・競争環境を持っている。日本のAmazonや楽天と同じ感覚でアプローチすると大きく外れるため、まず性格の違いをしっかりと把握することが重要だ。

Shopee(ショッピー)——フィリピンECの事実上の王座

シンガポール企業Sea Limitedが運営するShopeeは、2024年に東南アジア全体でGMV(流通総額)1,000億ドルを超え、初の通期黒字化を達成した。
東南アジア6カ国のEC市場シェアは48%(2023年、Momentum Works調査)と圧倒的で、2024年に地域全体で増加した140億ドルのGMVのうち実に120億ドルをShopeeが獲得したとされる。
フィリピンでは月次の大型セール(9.9セール・11.11セール・12.12セールなど)には現地メディアが積極的に報じるほどの社会的認知度がある。
グローバルの月間アクティブユーザーは2024年に3億7,500万人を超え、日本からの越境EC出品においてもShopee JapanがSLS(Shopee Logistics Service)を通じた日本→フィリピン向け配送をサポートしており、比較的スムーズに参入できる環境が整っている。
TikTok Shop——「見ていたら買ってしまった」の発見型EC

2022年にフィリピンへ上陸したTikTok Shopは、短期間で存在感を急拡大させている。
2024年のTikTok Shop(グローバル)GMVは332億ドルを突破し、地域別ではフィリピンが31.2億ドルで東南アジア5位の規模に達した。
最大の特徴は、ショート動画やライブ配信の「視聴中」に購買が完結する構造だ。消費者は何かを買おうとして動画を開くのではなく、エンタメを楽しんでいる延長線上に購買体験がある。
美容・パーソナルケア製品がTikTok Shop全体GMVの22.5%を占めるトップカテゴリとなっており、フィリピン市場でも美容・スキンケアジャンルにおける動画レビューとライブコマースの相乗効果が顕著に現れている。
Lazada(ラザダ)——アリババ傘下の「信頼と品揃え」

中国アリババグループ傘下のLazadaは、2012年にフィリピンへ最初に進出した老舗プラットフォームだ。
Shopeeにシェアを奪われた時期もあったが、2024年には初の通年黒字を達成し、高品質商品の品揃えとAI駆動の物流最適化で差別化を図る戦略へ転換した。
Amazonの倉庫型物流(FBAに相当する仕組み)に近いシステムを持ち、在庫をLazada倉庫に預けることで配送速度と信頼性を高めることができる。出品には法人資格が必要で審査もやや厳しめだが、そのぶん既存のShopeeとは異なる購買層(信頼性を重視する中間層・ビジネスユーザー)にリーチできる。
ライブコマースが市場を塗り替えつつある
フィリピンECの「次の波」として無視できないのが、ライブコマースの急拡大だ。ジェトロが引用するMomentum Worksの調査(2024年7月発表)によると、東南アジア6カ国のEC全体に占めるライブコマースの割合は、2022年の5%未満から2024年には20%へと急増した。
フィリピンはSNS先進国であり、Facebookライブやショッピーライブ、TikTokの生配信が商品販売の有力チャネルとして定着してきている。

ライブコマースの拡大は、商品を「検索して発見する」時代から「動画を見ていて出会う」時代への転換を象徴している。
日本のメーカーが商品ページを丁寧に作るだけでは不十分で、現地の人気インフルエンサーが実際に使って見せる「実演販売」の構造をデジタル上で再現することが求められる。
フィリピンでは特に、信頼できる人物が「実際に試して効果があった」と伝える情報を信じる傾向が強く、機能訴求よりも「共感と体験の共有」が購買のスイッチになりやすい。
Shopee LiveやTikTok Shopのライブ配信では、配信中にコメント欄で視聴者が質問を投げかけ、インフルエンサーがリアルタイムで答えるというインタラクションが日常的に行われており、この双方向性が購買への背中を押す最後の一手になっている。
日本の商品が「どんな人が使っているのか」「使うとどう変わるのか」をライブで体験的に見せることができれば、静的な商品ページよりはるかに強い訴求力を持つ。
フィリピンで売れる商品カテゴリ——日本製品の強みはどこにあるか
フィリピンのEC市場で日本製品が特に強みを持つカテゴリは、ある程度明確だ。Shopee Japanのデータや現地調査結果をもとに整理すると、とりわけ有望なのはヘルスケア・パーソナルケア、ホーム&リビング、食品・飲料、そしてホビー・文具の四分野だ。

なかでもヘルスケア・パーソナルケアはTikTok Shop・Shopee双方で最強のカテゴリだ。
フィリピンでは気候の特性から乾燥肌・日焼け対策への関心が高く、日本の「品質が高くて価格が合理的」なスキンケアや化粧品は現地で高い評価を得やすい。
日本のドラッグストアで普通に売られているような商品が、フィリピンでは「プレミアムな輸入品」として位置づけられ、付加価値をともなった価格で販売できるケースも多い。
また、「日本から来た商品」というだけで一定の信頼を獲得できる点は、他のアジア市場よりも顕著だ。
ジェトロが2025年に現地ヒアリングした結果でも、ニッチな日本商品や健康志向商品へのフィリピン消費者の関心が高まっていることが確認されている。
ホーム&リビングカテゴリも見逃せない。
「時短」「便利」「丁寧なモノづくり」を体現する日本の生活雑貨は、フィリピンの中間層が豊かな暮らしへの憧れを持ち始めた現在、SNSでの「発見型購買」と相性が非常にいい。
整理収納グッズやキッチン用の便利グッズは、動画での実演映えがしやすく、ライブコマースとの親和性も高い領域だ。
日本企業が直面する3つの現実的な壁
市場の魅力を理解した次に来るのが、「では実際にどうやって参入するか」という実務の問いだ。
ここで多くの企業がぶつかるのが、以下の三つの壁だ。
一つめは「消費者インサイトの読めなさ」。フィリピン人の購買判断は、スペックや価格よりも「信頼できる人が勧めているか」に強く依存する。
SNS上の口コミやインフルエンサーの発信が購買に直結するこの構造は、日本のB2CマーケティングのKPIとまったく異なる感覚で設計する必要がある。
二つめは「言語とローカライズの問題」。英語は公用語だが、日常では主にタガログ語やセブアノ語が使われており、商品説明やカスタマーサポートを現地の言葉と感性でローカライズしないと、競合の現地出品者には勝てない。
三つめは「プロモーション実行力の不足」だ。インフルエンサー選定、ライブ配信のタイミング、各プラットフォームのセールイベントへの参加——これらを東京のオフィスからリモートで管理しようとすると、判断の遅さとコミュニケーションのズレが売上機会の損失につながる。

この三つの壁を一社で乗り越えようとすると、相当なリソースと時間が必要になる。逆に言えば、現地に精通したパートナーと組むことができれば、これらの壁は一気に低くなる。どんなに優れた商品であっても、市場のルールを知り、現地で実際に動ける体制なしには売上には結びつかない。それがフィリピンEC市場の正直なところだ。
フィリピンEC代行サービスの選び方|AXIA Promotion & Trading Philippines Corporationが選ばれる理由
フィリピン市場の現状をここまで見てきたとき、多くの企業担当者が感じるのは「現地で実際に動いてくれる存在が必要だ」という実感だろう。
EC代行やコンサルティングサービスは国内外に多数存在するが、決定的な違いは「戦略を提案するだけ」なのか、「現地で手を動かして売上をつくる」のかという点だ。前者はアドバイスを受け取って自社で実行する形になるため、結局「誰が動くのか問題」に戻ってしまう。
AXIA Promotion & Trading Philippines CorporationのEC/SNS運用 4つのサービス柱
AXIA Promotion & Trading Philippines Corporationが提供するEC代行サービスの特徴は、出品設定だけを代行する「EC出品業者」でも、戦略書を渡すだけの「コンサルタント」でもない点だ。
Shopee・Lazadaのストア運用から、SNSクリエイティブ制作・広告運用・インフルエンサー施策・ライブコマースまでを4つの柱で一体的に担い、PDCAを継続する「実行チーム」として機能する。

競合他社との比較|AXIA・一般コンサル・越境EC専門会社
フィリピンEC参入の支援会社は大きく「戦略提案型コンサル」「越境EC専門会社(日本拠点型)」「現地実行型代行」の3つに分類される。それぞれの強みと限界を比較すると、AXIAが最も力を発揮するシーンが明確になる。

フィリピンEC市場は「可能性」ではなく「実行力」で差がつく——AXIA Promotion & Trading Philippines Corporationに相談する
フィリピンのEC市場は、数字だけ見れば「今すぐ参入すべき市場」に映る。
2025年に東南アジア全体のEC規模は1,576億ドルを超え、フィリピン単体でも前年比20%超の成長が続いている。Shopeeが盤石の首位を維持しながら、TikTok Shopがライブコマースの力で急追し、消費者の購買行動はSNSと完全に一体化した。
日本製品への信頼は根強く、ヘルスケアから生活雑貨まで、「日本から来た商品」というだけで差別化になる場面が今もフィリピンには存在する。
だが同時に、この記事を通じて見えてきたのは「知っているだけでは売れない」という現実だ。
タガログ語のニュアンスで書かれた商品ページ、フィリピン消費者の感性に合ったクリエイティブ、セールイベントのタイミングを逃さない広告運用、信頼できるインフルエンサーとのネットワーク——これらはすべて、現地にいなければ機能させることができない。
東京のオフィスから遠隔で「やった気」になるだけでは、商品は出品ページの奥に埋もれていくだけだ。
フィリピン市場は「可能性がある」のではなく、「正しくアプローチすれば売れる」市場だ。その「正しいアプローチ」を、現地で123社とともに積み上げてきたのがAXIA Philippinesだ。
最初の一歩は小さくていい。まず市場の反応を肌で感じることから始め、データをもとに次の手を打つ——その伴走を、ぜひAXIA Promotion & Trading Philippines Corporationに任せてほしい。
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参考・出典一覧
1. Mordor Intelligence「フィリピンのEコマース市場規模・シェア分析:成長動向と予測(2024〜2029年)」 https://www.mordorintelligence.com/ja/industry-reports/philippines-ecommerce-market
2. 日本商工会議所「フィリピンで急拡大するEC市場」(フィリピン日本人商工会議所 事務局長 小関友寛コメント) https://archive.jcci.or.jp/international/2022/0310181412.html
3. ジェトロ「フィリピンの投資環境(2)旺盛な消費市場、日本製品にもチャンス」(2025年4月) https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2025/5c2b8156cb2c9533.html
4. ジェトロビジネス短信「東南アジアのEC拡大、ライブコマース人気が牽引」(2024年11月) https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/11/c97e6180ec651873.html
5. We Are Social / Meltwater / DataReportal「Digital 2025: The Philippines」(2025年2月版) https://gdx-j.com/column/global-marketing/asean/phillipines-digitalmarketing2025/
6. Shopee Japan「フィリピン市場について」 https://shopee.jp/column/market-philippines/
7. Shopee Japan「ShopeeとLazadaを徹底比較」 https://shopee.jp/column/shopee_lazada/
8. Shopee Japan「ECモールの正解はどこ?」(MAUデータ等) https://shopee.jp/column/ecmall-2/
9. Momentum Works / The Wolf of Harcourt Street「Shopee's Dominance in Southeast Asia」(2025年) https://www.thewolfofharcourtstreet.com/p/shopees-dominance-in-southeast-asias
10. LIFE PEPPER「TikTok Shop成功事例:美容・スキンケアブランド編」 https://www.lifepepper.co.jp/abroad/tiktok-shop%E6%88%90%E5%8A%9F%E4%BA%8B%E4%BE%8B%EF%BC%9A%E7%BE%8E%E5%AE%B9%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B1%E3%82%A2%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E7%B7%A8/
11. AXIA Promotion & Trading Philippines Corporation プレスリリース(PR TIMES、2026年3月10日) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000169600.html

執筆者
金田 大樹
鉄鋼専門商社や株式会社ネオキャリアのフィリピン現地法人での勤務を経て、リサーチ事業にて起業。中堅~大手の調査会社やコンサルティング会社のリサーチのプロジェクト管理を行った。その後、AXIA Marketing(アクシアマーケティング)株式会社を設立し、代表取締役に就任。フィリピン市場の成長を受けて、「AXIA Promotion & Trading Philippines Corporation」を立ち上げ。上場企業をはじめ、多くの企業の成長を「価値ある情報提供力」でサポートしている。
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