2026-08-25
ノウハウ
訪日外国人の消費行動を丸裸に。ヒット商品に共通する3つの法則とフィリピン市場「テスト販売」という現実解

観光庁が2026年7月に発表した最新のインバウンド消費動向調査によると、2026年4〜6月期の訪日外国人旅行消費額は2兆5,096億円、2025年の年間消費額は9兆4,559億円と過去最高を更新し続けています。もはや「訪日外国人が増えている」という段階の話ではありません。
いま経営者やマーケティング担当者が本当に向き合うべきは、彼らが何を買い、なぜそれを選んだのかという消費行動そのものです。
訪日外国人と消費行動というテーマは、実は日本国内だけで完結する話ではありません。空港の免税店やドラッグストアで見過ごされてしまいがちな「爆買い」の中身には、海外市場でそのまま通用する製品開発とマーケティングのヒントが詰まっています。
本記事では最新の統計データをもとに国別の消費傾向とヒット商品に共通する構造を分析し、その知見を東南アジアで急成長を続けるフィリピン市場へどう接続すべきかを、テスト販売という具体的な実行策とあわせて解説します。
- 訪日外国人の消費行動はいま、どう変わっているのか
- 国・地域別にみる消費行動の違い──「誰が」「何に」お金を使うのか
- 欧米豪州・中国・韓国・フィリピン、4つの消費モデル
- 最新統計に見る訪日客の構造変化──中国依存からの脱却と多市場化
- 訪日外国人の消費行動に共通する「ヒット商品」3つの法則
- シェアされやすさ、安心感、そして「今しか買えない」という限定性
- 旅ナカでの訪日外国人の消費行動は、旅アトの購買データそのものである
- 日本のトレンドをフィリピン市場へどう接続するか
- パサルボン文化と製品受容性
- 現地流通とライブコマースという前提条件
- 訪日外国人の消費行動をフィリピンで検証する──受容性調査とテスト販売という現実的な一歩
- フィリピン進出をご検討の方は、AXIA Promotion & Trading Philippines Corporationへご相談ください
訪日外国人の消費行動はいま、どう変わっているのか
観光庁のインバウンド消費動向調査を四半期ごとに追うと、消費額の伸びと同時に、消費の中身が静かに変化していることがわかります。費目別の構成比を見ると、宿泊費が全体の約3割を占める最大費目であり、飲食費・買い物代がそれに続きます。
かつて主役だった買い物代の構成比はやや落ち着き、代わって宿泊費と娯楽等サービス費の割合が上昇しています。滞在日数の長期化と、体験や滞在空間そのものにお金を払う「コト消費」への移行が背景にあります。

ただし、このマクロな傾向だけを見て「モノ消費は終わった」と判断するのは早計です。国・地域別に分解すると、1人当たりの旅行支出額には2倍以上の開きがあり、買い物代への依存度も市場ごとにまったく異なります。ここに、訪日外国人×消費行動を海外展開の武器に変えるための最初のヒントがあります。
国・地域別にみる消費行動の違い──「誰が」「何に」お金を使うのか
訪日外国人の消費行動をひとつの傾向として語ることはできません。同じインバウンド消費でも、国・地域によって重視する費目も、購買のタイミングも、金額感覚もまったく異なります。ここでは代表的な4つの市場を取り上げ、それぞれの消費行動モデルの違いを解説します。
欧米豪州・中国・韓国・フィリピン、4つの消費モデル
欧米・豪州からの旅行者は1人当たり消費額が最も高く、宿泊費と交通費への支出が突出しています。10日前後から数週間という長期滞在が前提で、体験型の観光やサービスにお金をかける一方、買い物の比率は相対的に低いのが特徴です。
中国からの旅行者は総消費額で依然トップクラスを維持し、買い物代と宿泊費への支出が大きく、化粧品・香水や医薬品、ブランド品への購買力が突出しています。
韓国からの旅行者は1人当たり消費額こそ中位ですが、3〜4日程度の短期滞在を年に何度も繰り返す高頻度リピーターが多く、飲食費と日常使いの衣類・菓子類への支出が中心です。
そしてフィリピンからの旅行者は、2025年の訪日者数が88万5千人、旅行消費額が1,636億円とともに過去最高を記録し、コロナ前の2019年比で33.6%増という高い伸び率を示しています。
1人当たり消費額はアジアの中では低めですが、リピーター比率は約6割から7割近くまで上昇しており、初めての日本観光から日本の生活様式を継続的に消費するフェーズへ移行しつつあります。宿泊費とともに買い物代の構成比が高く、その中心にあるのが家族や職場の同僚への手土産、いわゆるパサルボン需要です。

この4類型のうちフィリピンだけが持つ特徴が、贈答文化に紐づいた購買行動です。これは個人消費というより、家族・親族・職場という人間関係のネットワークを介した消費であり、現地マーケティングの設計を大きく左右します。
最新統計に見る訪日客の構造変化──中国依存からの脱却と多市場化
ここまでの分析をより裏付けるのが、日本政府観光局(JNTO)が2026年7月15日に発表した最新の訪日外客数推計値です。2026年6月の訪日外国人数は314万8,600人で前年同月比6.8%減となり、4月から3カ月連続で前年を下回りました。
しかし、この数字だけを見て訪日需要そのものが縮小していると判断するのは誤りです。内訳を見ると、中国からの訪日者数が79万8,001人から34万700人へと57.3%も急減したことが全体を押し下げた最大の要因であり、中国を除く市場を合算すると実際には8.8%増と、むしろ拡大しているのです。
実際、韓国は78万7,100人(前年同月比7.8%増)、台湾は67万400人(同14.6%増)、香港は21万4,300人(同28.5%増)と大きく伸び、韓国・台湾・米国・インドなど15市場では6月として過去最高を記録しました。2026年1〜6月の累計で見ても、韓国は前年同期比18.6%増、台湾は20.9%増、インドは22.9%増と、中国以外の市場では総じて力強い成長が続いています。

この構造変化は、訪日外国人×消費行動というテーマにおいて極めて重要な意味を持ちます。
これまで消費額の押し上げ役を担ってきた中国という単一市場への依存度が急速に低下し、韓国・台湾・東南アジア・インドといった複数市場が消費の担い手として存在感を増しているということは、ヒット商品の設計や海外展開の戦略もまた、特定の一市場向けではなく、複数の消費行動モデルを踏まえたポートフォリオ型で組み立てる必要があることを意味します。
フィリピンについても、2026年6月単月は5万9,900人と前年同月比5.2%減となったものの、1〜6月累計では47万4,300人と前年同期比5.8%増を維持しており、短期的な変動はあっても中長期的な成長トレンドそのものは崩れていません。
中国一強時代の終わりが見え始めたいま、フィリピンをはじめとする成長市場の消費行動を早期に理解し布石を打つことが、これまで以上に重要な経営判断になっています。
訪日外国人の消費行動に共通する「ヒット商品」3つの法則
国籍を問わず、訪日外国人が購入し高い満足度を示す商品には、共通するカテゴリーがあります。観光庁のデータでは、化粧品・香水、菓子類、衣類、靴・かばん・革製品、医薬品・日用品が上位を占め続けています。これらの商品がなぜ選ばれるのかを分解すると、単なる品質の良さを超えた3つの因果関係が浮かび上がります。
シェアされやすさ、安心感、そして「今しか買えない」という限定性
一つ目は個包装でシェアしやすいことです。アジア圏の旅行者の多くは、職場や親族に土産を配る強い社会的習慣を持っており、個包装菓子が支持される理由は、味だけでなく帰国後に配りやすいという機能的な適合性にあります。
二つ目は安心・安全に裏打ちされた機能的な信頼です。スキンケアやヘアケア製品、OTC医薬品は、成分の安全性と使用感において自国製品との差が明確に認識されており、免税で割安に買えることも購買動機を後押ししています。
三つ目は限定性と物語性です。季節限定のパッケージや地域限定フレーバーは「今、ここでしか買えない」という緊急性を生み出し、購買の決め手になります。
旅ナカでの訪日外国人の消費行動は、旅アトの購買データそのものである
ジェトロが公開している分析レポートでは、訪日中に一番満足した飲食として「肉料理」が主要5カ国・地域すべてで1位となり、その理由として自国では味わえないという回答が多く挙がっています。
これは、日本滞在中の消費行動が単なる思い出づくりではなく、帰国後もその商品を求めるかどうかを予測する一次データであることを示しています。ジェトロが実施した受容性調査でも、参加企業からは購買を妨げる要因や商品開発への具体的な示唆が得られたという声が上がっており、旅ナカのフィードバックがそのまま海外展開の意思決定材料になり得ることが裏付けられています。
日本のトレンドをフィリピン市場へどう接続するか
ここまで見てきた訪日中の消費データを、そのまま海外へ持ち込んでも机上の空論に終わってしまいます。
日本国内で実証されたヒットの方程式は、現地の生活習慣や購買チャネルに接続して初めて、海外展開の武器になります。ここではフィリピン市場を例に、日本のトレンドを現地へ橋渡しする際に押さえるべき2つの視点を整理します。
パサルボン文化と製品受容性
フィリピン市場へのアプローチで欠かせないのが、旅行や帰省の際に家族や職場へ手土産を持ち帰る「パサルボン」という文化です。フィリピン人が日本滞在中に買い求める商品には、この文化に適合した明確な傾向があります。
濃厚な甘みや食感を持つ菓子類、米食文化との親和性が高いふりかけや醤油系スナック、そして強い日差しとエアコンによる乾燥対策としての保湿系コスメが、現地のドラッグストアやモールで指名買いされる定番品になっています。
現地流通とライブコマースという前提条件
フィリピンの流通は、大手財閥グループが運営する大型ショッピングモールとそこに併設されるドラッグストアが主要チャネルです。
加えて近年は、TikTok ShopやShopee上でのライブ配信を通じてその場で購入させるライブコマースが定着しており、認知向上だけを狙う従来型のSNSプロモーションでは不十分になりつつあります。「見せて、その場で買わせる」設計への転換が前提条件になっています。
訪日外国人の消費行動をフィリピンで検証する──受容性調査とテスト販売という現実的な一歩
インバウンド客の購買データから現地の潜在需要が見えてきても、いきなり大規模な輸出や現地法人設立に踏み切るのはリスクが大きすぎます。現地の許認可規制、関税、物流インフラ、そして消費者の価格受容性を段階的に検証するテストマーケティングが不可欠です。実務では、次のようなステップで検証サイクルを回すことが有効です。

このプロセスで最大の障壁になりやすいのが、食品医薬品局への登録の煩雑さと、7,000以上の島々からなる物流上の制約です。現地ですでに販売ライセンスを保有するパートナーのもとで小ロットの委託販売を行うスキームは、初期投資と時間的リスクを大幅に抑えられる現実的な選択肢です。
アンケートだけでは測れない「実際に財布からお金を出すか」という真の購買行動を、小規模な実売検証で数値化できれば、その実績は現地の大型バイヤーとの商談における強力な交渉材料にもなります。
フィリピン進出をご検討の方は、AXIA Promotion & Trading Philippines Corporationへご相談ください
訪日外国人の消費データが示すヒットの方程式を、そのままフィリピン市場に持ち込んでも机上の空論に終わってしまいます。大切なのは、現地での小さな実売検証を通じて「本当に売れるか」を確かめてから、本格展開の判断を下すことです。
AXIA Promotion & Trading Philippines Corporationは、フィリピン市場におけるテストマーケティングの設計から、現地店舗・モールでの実売検証、FDA登録などの許認可サポート、SNS・インフルエンサーマーケティング、現地ディストリビューター開拓まで、フェーズに応じた一気通貫の現地実行体制を提供しています。
大きな投資判断をする前に、まずは現地の実売データに基づいたスモールスタートから始めてみませんか。フィリピン市場への進出をご検討の際は、ぜひAXIA Promotion & Trading Philippines Corporationまでお気軽にお問い合わせください。
出典
観光庁「インバウンド消費動向調査2026年4-6月期(1次速報)」 https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_00094.html
観光庁「インバウンド消費動向調査2025年暦年(速報)及び10-12月期(1次速報)」 https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_00071.html
観光庁「インバウンド消費動向調査2026年1-3月期(1次速報)」 https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_00082.html
やまとごころ.jp「2025年インバウンド消費額9.5兆円で過去最高を更新」 https://yamatogokoro.jp/inbound_data/59160/
訪日ラボ「フィリピン市場の最新インバウンドデータを徹底解説【2025年年間】」 https://honichi.com/news/2026/03/04/inbound-philippines-2025/
ENJOY JAPAN「訪日フィリピン人観光客のインバウンドマーケティング」 https://enjoy-japan.jp/column/attract-philippines/
アウンコンサルティング「2025年インバウンド市場動向まとめ」 https://www.auncon.co.jp/press/research/2026-02-13/
ジェトロ「インバウンド客のニーズを出発点に旅アトビジネスへ」 https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2026/731642e00da91145.html
ジェトロ「インバウンド客からのフィードバックを輸出に生かす」 https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2025/68b2684c8a56225b.html
AXIA Promotion & Trading Philippines Corporation「フィリピンでテストマーケティングを成功させる完全ガイド」 https://axia-philippines.com/columm/philippines-testmarketing
AXIA Promotion & Trading Philippines Corporation 公式サイト https://axia-philippines.com/
日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年6月推計値)」 https://www.jnto.go.jp/news/press/20260715_monthly.html
日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年6月推計値)」報道発表資料(PDF) https://www.jnto.go.jp/statistics/data/_files/20260715_1615-1.pdf
日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」月別統計データ https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/

執筆者
金田 大樹
鉄鋼専門商社や株式会社ネオキャリアのフィリピン現地法人での勤務を経て、リサーチ事業にて起業。中堅~大手の調査会社やコンサルティング会社のリサーチのプロジェクト管理を行った。その後、AXIA Marketing(アクシアマーケティング)株式会社を設立し、代表取締役に就任。フィリピン市場の成長を受けて、「AXIA Promotion & Trading Philippines Corporation」を立ち上げ。上場企業をはじめ、多くの企業の成長を「価値ある情報提供力」でサポートしている。
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